陀羅尼だらに)” の例文
次に陀羅尼だらにということばですが、これもまた梵語で、翻訳すれば「惣持そうじ」、べてを持つということで、あの鶴見つるみ惣持寺そうじじの惣持です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
仏教に陀羅尼だらにと呼ぶものがあります。梵音ぼんおんをそのまま漢字にあてて発音するので、原文を知らぬ一般の者には、何のことかてんで分りませぬ。
益子の絵土瓶 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
と申しますのは、まず第一に摩利信乃法師まりしのほうしが、あの怪しげな陀羅尼だらにの力で、瞬く暇に多くの病者をなおした事でございます。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
行者のことだから呪文か陀羅尼だらにのようなものを唱えているのかも知れないと、そう思って通り過ぎる人が多かったけれども、どうも呪文ではないらしい
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
さるにや気も心もよわよわとなりもてゆく、ものを見る明かに、耳の鳴るがやみて、恐しき吹降りのなかに陀羅尼だらにじゅするひじりの声々さわやかに聞きとられつ。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
阿闍梨あじゃり夜居よいの護持僧を勤めていて、少し居眠りをしたあとでさめて、陀羅尼だらにを読み出したのが、老いたしわがれ声ではあったが老巧者らしく頼もしく聞かれた。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
まず、三密とは身密、語密、意密の三種のことにて、身密とは手に印契いんげいを結びて修行すること、語密とは口に真言陀羅尼だらにを唱うること、意密とは心に真言の法を念ずることじゃ。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
小石だもはらひし三五福田ふくでんながら、さすがにここは寺院遠く、三六陀羅尼だらに三七鈴錫れいしやくこゑも聞えず。立は三八雲をしのぎてみさび、三九道にさかふ水の音ほそぼそとみわたりて物がなしき。
京管領細川右京太夫政元は四十歳のころまで女人禁制にて、魔法飯綱の法愛宕の法を行ひ、さながら出家の如く、山伏の如し、或時は経を読み、陀羅尼だらにをへんしければ、見る人身の毛もよだちける。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ほととぎす山の法師が大音たいおんの初夜の陀羅尼だらにのこだまする寺
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
目見まみ青きドミニカびとは陀羅尼だらにし夢にも語る
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
陀羅尼だらにきょうもどんな供養も
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さるにや気も心もよわよわとなりもてゆく、ものを見るあきらかに、耳の鳴るがやみて、恐しき吹降ふきぶりのなかに陀羅尼だらにじゆするひじり声々こえごえさわやかに聞きとられつ。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
陀羅尼だらにの一遍も回向えこうしないのは邪慳と云うものだ、その上佛の利益りやくにも背き、亡者の恨みもあるであろう、これは帰った方がよいと悟って、戻って来て見ましたら
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
今度山から来た僧も大男で、恐ろしい目つきをして荒々しく陀羅尼だらにを読んでいるのを、衛門督は
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
つまりこの般若波羅蜜多が、そのまま陀羅尼だらになのです。真言しんごんなのです。じゅなのです。で、この般若の功徳を四通りに説明し、讃嘆したのが、ここにあるこの四種の呪です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
さては又しても悪魔ぢやぼめの悪巧みであらうずと心づいたによつて、ひたと御経に眼をさらしながら、専念に陀羅尼だらにし奉つて居つたに、傾城はかまへてこの隠者の翁を落さうと心にきはめつらう。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
陀羅尼だらにを唱える声も、鈴錫れいしゃくの音もきこえない。
いったい「じゅ」とか「真言しんごん」とか「陀羅尼だらに」などというものは、いわゆる「一字に千理を含む」で、たった一字の中にさえ、実に無量無辺の深い意味が含まれているのですから
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
賢そうに不動の陀羅尼だらにを読んで印を組んでいるようなのも憎らしいがね。
源氏物語:26 常夏 (新字新仮名) / 紫式部(著)
こう云うと沙門は旗竿を大きく両腕にいだきながら、大路おおじのただ中にひざまずいて、うやうやしげに頭を垂れました。そうして眼をつぶったまま、何やら怪しげな陀羅尼だらにのようなものを、声高こわだかし始めました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わし陀羅尼だらにじゅした。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何でも、同じ御堂おどうまいっていた連中の中に、背むしの坊主ぼうずが一人いて、そいつが何か陀羅尼だらにのようなものを、くどくどしていたそうでございます。大方それが、気になったせいでございましょう。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
律師が加持をする音がして、陀羅尼だらに経をびた声で読み出した。
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
わし陀羅尼だらにじゆした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
律師一人だけが病床に近くいて陀羅尼だらに経を読んでいた。
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
経は陀羅尼だらにである。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)