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錦葉
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もみぢ
手屆く
其の
山懷に、
蔽ひかさなる
錦葉の
蔭に、
葉の
眞赤な
龍膽が、ふさ/\と二三
輪、
霜に
紫を
凝して
咲く。……
時に、
薄霧が、
紙帳を
伸べて、
蜻蛉の
色はちら/\と、
錦葉の
唄を
描いた。
八月六日の
日と
覺えて
居る。
月が
晃々と
窓を
射たので、
戞然と
玉の
函を
開いたやうに、
山々谷々の
錦葉の
錦は、
照々と
輝を
帶びて
颯と
目の
前に
又卷絹を
解擴げた。が、
末は
仄々と
薄く
成り
行く。
人形のやうな
此の
女達、
聲を
聞きたい、
錦葉に
歌ふ
色鳥であらう。
うつくしきかな、
羽、
翼、
霧を
拂つて
錦葉に
似たり。