ゆる)” の例文
旧字:
お浪は仔細ないと認められて一と先ずゆるされたが、お照は申し口に少し胡乱うろんかどがあるというので、これも番屋に止められた。
半七捕物帳:19 お照の父 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
武はその言葉に従って、林児をしばって邑宰の所へ送った。しかし御史の家から名刺をよこしてくると、邑宰は林児をゆるしてその下男に渡して帰した。
田七郎 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
ボヘミヤの某所では、百姓が通常の鼠をゆるさず殺せど白鼠を見付くれば殺さず、窓に巣を作ってこれをう。それが死ねばその家の福尽き常の鼠が殖えるそうだ。
京兆けいちょういん温璋おんしょうは衙卒の訴にもとづいて魚玄機を逮捕させた。玄機はごう弁疏べんそすることなくして罪に服した。楽人陳某は鞠問きくもんを受けたが、情を知らざるものとしてゆるされた。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
このたたかい火耳灰ホルフイほこって燕王にせまる、あいるたゞ十歩ばかり、童信どうしん射って、その馬につ。馬倒れて王のがれ、火耳灰ホルフイらる。王即便すなわち火耳灰ホルフイゆるし、当夜に入って宿衛しゅくえいせしむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「きつと話を付けるから、この手をゆるしてくれ給へ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
任は怒ってゆるさなかった。二成はそこでまた地券を任にやって、かってにってもかまわないということにして、やっともとの金をもらって帰って来た。
珊瑚 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
コックの富太郎と雇い女のお歌が、主人夫婦の変死について少しも知らないのは可怪おかしいと云う者もありましたが、まったく知らないと判ってゆるされました。
半七捕物帳:59 蟹のお角 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「門外も為仕度段つかまつらせたきだん、存寄之通可被仕候つかまつらるべくそろ」と云ふ浅野安藝守重晟しげあきらが月番の達しに依つてゆるされた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
太祖が孝孺を愛重せしは、前後召見のあいだおいて、たま/\仇家きゅうかためるいせられて孝孺の闕下けっか械送かいそうせられし時、太祖そのを記し居たまいてことゆるされしことあるに徴しても明らかなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
商人汝彼ら殺さずばわれ食事せん、ゆるさぬ内は一切馳走を受けぬと言い張ったので竜女も我を折り、直様すぐさま釈す事はならぬが六ヶ月間人間界へ擯出しようと言ってやがてかの二竜を竜宮から追い出した
風「もうゆるしてやれ、大分だいぶ苦しさうだ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
王は西隣の父親のためにあやまってやったので、西隣の父親はゆるしてもらって帰って来た。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
財をし兵を損して而して功無きものは国に謀臣無きに近しとなし、願わくは斉王をゆるし、湘王をほうじ、周王を京師けいしかえし、諸王世子せいしをして書を持し燕に勧め、干戈かんかめ、親戚しんせきあつうしたまえ
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
伊平は無事にゆるされた。
西瓜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
武は心を痛めながらそこを出て、急いでたくさんの金を邑宰むらやくにんに送り、また百金を七郎のかたきの家へ送ったので、一ヵ月あまりで事がすんで七郎はゆるされて帰って来た。母親は悲痛な顔をしていった。
田七郎 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)