逮夜たいや)” の例文
その翌夜は黒沼の逮夜たいやで、長八夫婦と長三郎は列席した。他にも十五、六人の客があったが、大抵の人は東青柳町の噂を聞き知っていた。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それから六日目、越前屋の主人治兵衞は、娘お菊の初七日の逮夜たいやの晩、同じ物干臺の上で、後ろから脇差で刺されて死んでしまつたのです。
娘の死を他のとがによらずして、最初に還らざりしその不了簡に帰し、日も暮るれば死人をうちにれて逮夜たいやせんと、村人に謝礼しつ、夫婦して娘の死骸を抱き上げたり、父老壮年
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
それはなさけない事だ、遠い国へ来て、御兄弟だか御親類だか知らないが、死人を葬りぱなしにしてお立ちなさるのは情ない、せめて七日の逮夜たいやでも済ましてお立ちになったらかろうに
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
妻女は愈々いよいよ哀れに思い死骸を引取ひきとり、厚く埋葬をてやったが、丁度ちょうど三七日の逮夜たいやに何かこしらえて、近所へ配ろうとその用意をしているところへ、東洋鮨とうようずしから鮨の折詰おりづめを沢山持来もちきたりしに不審晴れず
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
二三 同じ人の二七日の逮夜たいやに、知音の者集まりて、夜くるまで念仏をとなえ立ち帰らんとする時、門口かどぐちの石に腰掛けてあちらを向ける老女あり。そのうしろつき正しくくなりし人の通りなりき。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
たとえば封建の世に大名の家来は表向きみな忠臣のつもりにて、その形を見れば君臣上下の名分を正し、辞儀をするにも敷居しきい一筋の内外うちそとを争い、亡君の逮夜たいやには精進しょうじんを守り、若殿の誕生には上下かみしもを着し
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
一月三十日 無量子真如堂の逮夜たいや導師をつとむるといふに。
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
親の逮夜たいやとと食うて
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
主人の逮夜たいや蛸肴たこざかな
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
とぐる處一々明白めいはくに申立ると雖も其方儀先頃無量庵へ闇夜あんやせつ提灯ちやうちんの用意もなく參りしとあり其刻限こくげんとくと申立よと云れければ九助夫は去る三月十九日は私し妻節が實母七回逮夜たいやに當り候間上新田村無量庵の住寺は生佛いきぼとけの樣に近郷きんがう近村にて申となふるにより何卒回向ゑかう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
紋作の初七日の逮夜たいやが来た。今夜は小間物屋の二階で型ばかりの法事を営むことになって、兄弟子の紋七は昼間からその世話焼きに来ていた。
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
半兵衛の初七日の逮夜たいやで、この家から一足も出なかったでしょう、——そして番頭の宇八の殺された晩は、ここにあっしと叔母が泊って見張っていました。
お富のためには真実の叔母ゆえ、あとねんごろに野辺の送りも済ませてから、丁度七日の逮夜たいやの日に、本郷ほんごう春木はるき町の廻りの髪結かみゆい長次ちょうじさんと云う、色の浅黒い、三十二三になる小粋こいきな男がって参りました。
二三 同じ人の二七日の逮夜たいやに、知音の者集まりて、夜更くるまで念仏を唱へ立ち帰らんとする時、門口かどぐちの石に腰掛けてあちらを向ける老女あり。そのうしろつき正しく亡くなりし人の通りなりき。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
師匠が死んで稽古は無いはずであるのに、家内は何かごたごたしていた。半七は指を折って、あしたは初七日しょなのか、今夜はその逮夜たいやであることを知った。
昨夜はその逮夜たいやで、坊主を呼んでモガモガとやらかして、寢たのは亥刻よつ過ぎ、あつしは其處まで見窮めて、赤羽橋へ歸ると、今朝は夜の引け明けに急の使ひだ。
親の逮夜たいやにとゝうて それで背が低い
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「若い者が思い詰めると恐ろしい。ところで明後日が岩三郎の初七日とすると明日の晩は逮夜たいやじゃないか」
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
お朝の二七日にしちにちは七月七日であったが、その日はあたかも七夕たなばたの夜にあたるというので、六日の逮夜たいやに尾張屋の主人喜左衛門は親類共と寺まいりに行った。重吉も一緒に行った。
半七捕物帳:34 雷獣と蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
町内付合いもろくにない叶屋では、通夜なども至って淋しく、店中の者に親類が二三人、それにお徳とお雛が加わって、何かしらうわの空の逮夜たいやが営まれております。
銭形平次捕物控:130 仏敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「就きましては、明日は初七日しょなのか逮夜たいやに相当いたしますので、心ばかりの仏事を営みたいと存じます。御迷惑でもございましょうが、御夫婦と御子息に御列席を願いたいのでございますが……」
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
町内附合ひもろくにない叶屋かなうやでは、通夜なども至つて淋しく、店中の者に親類が二三人、それにお徳とお雛が加はつて、何んかしら上の空の逮夜たいやが營まれてをります。
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
明日は殺された半兵衛の初七日で、心ばかりの逮夜たいやを営みたいという、お栄の招きを受けたのです。
「坊つちやんの二七日の逮夜たいやだし、今日はお富さんが引揚げて來ると言ふんで、手傳ひ旁々、河内屋へ行つて、泊り込んださうですよ、多分飮みつぶれたことでせう」
銭形平次捕物控:050 碁敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「坊っちゃんの二七日の逮夜たいやだし、今日はお富さんが引揚げて来ると言うんで、手伝い旁々かたがた、河内屋へ行って、泊り込んだそうですよ、多分飲みつぶれたことでしょう」
銭形平次捕物控:050 碁敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「そりや逮夜たいやの法事ですもの、坊さんだけでも五人も呼びましたよ」