連合つれあい)” の例文
「ええ、あのころは、あなたが先の連合つれあいと私との事についてよくいろんなことをほじって聞いた、前の事を気味悪がり悪がり聞いた」
雪の日 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「俺よか年上だが、芸が好きで、俺のこと死んだ連合つれあいに似てるって言った娘さんにまだ会っていねえ。いつ出てみえるんだろう」
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
叔父というのは須永の母の妹の連合つれあいで、官吏から実業界へ這入って、今では四つか五つの会社に関係をっている相当な位地の人であったが
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
水野越前えちぜん勤倹御趣意きんけんごしゅいのときも、鼈甲べっこうかんざしをさしていて、外出するときは白紙かみを巻いて平気で歩いたが、連合つれあい卯兵衛が代っておとがめをうけたのだ。
連合つれあいの今の後室が、忘れずに、大事にかけてござらっしゃる、お心懸こころがけ天晴あっぱれなり、来歴づきでお宝物にされた鏡はまた錦の袋入。こいつもいわい。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このおばあさんに続いて、たすきをはずしながら挨拶に来る直次の連合つれあいのおさだ、直次の娘なぞの後から、小さな甥が四人もおげんのところへ御辞儀に来た。
ある女の生涯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「可愛いもんですよ。亡くなった連合つれあいが犬や小鳥の好きなたちでしてね。何度か飼ったことがございますよ。」
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
それから一年ほど過ぎて、連合つれあいの亡くなった由を知らせて来ました。志を送りましたら、その返事に、これで私も安心してかれます、としてありました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
母がくなってからは、父子おやこ三人のさびしい家であった。段々差し迫って来る窮迫に、召使の数も減って、たゞ忠実な老婢ばあやと、その連合つれあいの老僕とがいるだけだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
(その当時から駄夫と与里とは已に友達であつた——)一種の利権政治家である連合つれあいは晩年種々の画策に齟齬を来して「生ける屍」の如き凋落に会ひ、与里の学資にも窮してゐたが
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
小商売こあきないの一つも始め、飯盛上めしもりあがりの女でも連合つれあいにして、これからは温和おとなしく暮して行きてえものだと思わねえこともねえが、天道様てんとうさまがそうはおろしてくれめえから、とてものことにまた逆戻りで
私は仔細あって昨年夫婦連ふうふづれにて旅行の途中、二三里あとの山中にて山賊に逢いまして、連合つれあいの者は行方知れず、私は二人の山賊に追われます途端、幸か不幸か、思いがけなく熊の穴へ落ちまして
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
美人の連合つれあいは悪魔の化身けしん 私は悪魔の化身と思って居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
あっちあっちってまだ一間か一間半ばかしも行っていない方をあごで指し『間抜けだねえ。お前、あれが分らないか』と言うんです、それが先の連合つれあいなの。
雪の日 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
自分たちと同じほどの年頃のお方かと思っていましたが、女史は二十一か二の頃でありましたろう。お連合つれあいの博士は海外へ留学なさってお出のころでした。
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
この嫂は岸本が一番年長うえの兄の連合つれあいにあたって、節子から言えば学校時代に世話に成った伯母さんであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「いらっしゃい、誰方どなた、」と可愛い目で連合つれあいの顔をちょいと見る、年紀としは二十七だそうだが、小造こづくりで、それで緋の菱田鹿の子の帯揚というこのみであるから、二十はたちそこそこに見える位
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのお連合つれあいらしい中年の人が執事めいたことをしていられました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
その連合つれあいは郵便局の集金人で、ほかに家族はないさうだつた。
雨宮紅庵 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
太物ふともの問屋のお嫁御よめごになって、連合つれあいに別れたので、気苦労のないところへと再嫁して、浜子さんを生んだ時に、女の子だったらば、琴が上手じょうずになるようにと
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
田辺のおばあさんの亡くなった連合つれあいという人と、捨吉のお父さんとは、むかし歌の上の友達であったとか。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それから先の連合つれあいに嫁いでさんざん苦労もするし、そりゃおもしろいことも最初はじめのうちはありましたさ。
雪の日 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
おもての窓の部屋に、硝子ガラス戸の戸棚と小引出しがずっとならんでいたが、おしょさんの連合つれあい商業しょうばいは眼鏡のわくとレンズを問屋へ入れるだけで、商品がかさばらない商業だった。
講中の先達せんだつとかで、植木屋の老爺じいさんの弟の連合つれあいにあたる人だが、こう私の家に不幸の起るのは——第一引越して来た方角が悪かったこと、それから私の家内の信心に乏しいことなどを言って
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その子の母に連合つれあいがあって、生みの母の縁から深く附合つきあうようになったところ、なにしろその子の義父ちちだというので、何かと家の事へも手を出したがるし口も出すのです。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
死んだ連合つれあいとが、前にいった大長者格の呉服問屋、丁吟ちょうぎんからのれんを貰って、幕末明治のはじめに唐物屋を開いたのが大当りにあたって、問屋まちに肩をならべ、しかも斬新ざんしんな商業だけに
亀吉の精悍せいかんさが眼立ちもしたが、平三の背景は亀吉とちがって、おおかめさんの連合つれあいが若い時分、吉原の年明ねんあけの女郎が尋ねてきたのを、車力宿で隠囲かくまってやっていたというのが、不心得で
連合つれあいと口論したら、飯櫃めしびつほうりだして飯粒だらけになっていたって——家がお堀ばたの土手下で、土手へあがってはいけないという制札があるのに、わざと巡査のくる時分にかけ上ったりするって。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)