通牒つうちょう)” の例文
結論として大使館側の言い分では印度総督ヴァイスロイからの通牒つうちょうによって、大使館では到底ナリン殿下の日本滞在を許容するわけにはゆきかねる。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
が、憤怒に心の狂いかけていた勝平にとっては、最後の通牒つうちょうだった。彼は、寝そべっていた獅子ししのように、猛然と腰掛から離れた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
男のほうからは、あすリュクサンブールの博物館で会うことを命令する、一種の最後通牒つうちょうを送ってきた。彼女はそれへおもむいた。
「二十八日の通牒つうちょうは、もう、おのおののお手許へも、届いたことと思うが、当日の式事については、諸事、ご遺漏いろうのないように頼みますぞ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
H21は、そのてるすべてを彼らに与えて、彼らから聴き出した知識を逐一ちくいちもっとも敏速に通牒つうちょうせよ——そして、一つの注意が付加された。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
税関吏ワイトマンが、本部からの通牒つうちょうを短波受信機で受取って、顔色蒼白となったのは、次の日の早朝のことだった。
軍用鼠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
警察としては、近県一帯の各署へ、通牒つうちょうを発して置きさえすれば、もう賊は捕えたも同然である。という訳で、気長に風船の下降を待つことに一決した。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
理学部会委員に約束しておいたのを忘れていて、今日最後の通牒つうちょうを受けて驚いて大急ぎで書いたので甚だ妙なものになった。スパークのようなトランジェントな現象である。
スパーク (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
執政官政府が五百人議会にいたした革命第四年花月二日の通牒つうちょうにはブォナパルトと呼ばれてる、イタリー軍総司令官によって得られたモンテノッテの勝利が、パリーに伝えられた。
木村伊勢領内一揆蜂起ほうきの事は、氏郷から一面秀吉ならびに関東押えの徳川家康に通報し、一面は政宗へ、土地案内者たる御辺は殿下のかねての教令により出陣征伐あるべし、と通牒つうちょうして置て
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私は彼女が熊谷に通牒つうちょうしたりすることを恐れて、書簡箋しょかんせん、封筒、インキ、鉛筆、万年筆、郵便切手、一切のものを取り上げてしまい、それを彼女の荷物と一緒に植惣のかみさんに預けました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この通牒つうちょうの影響は大きかった。のみならず、諸藩の有志が評定のために参集していた学習院へ達した時は、イギリス側の申し出はいくらかゆがめられた形のものとなって諸有志の間に伝えられた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この形勢を見た米国大使は、わが外務大臣に最後通牒つうちょうをつきつけて
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
組頭くみがしら通牒つうちょうしてあるので、組頭は当日名簿と人員をたずさえて参加する。山岡家の兄弟も、ここへ連れて来られたのであった。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そう。」と、夫人は軽く会釈えしゃくして、女中を去らせると、静かに信一郎の方を振向きながら、彼女の最後の通牒つうちょうを送った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そして、最後通牒つうちょうの前日だと思われたある日——両国において行動の全弾力が緊張して殺害の用意をしてるある日、すべての人々が心を決してるのにクリストフは気づいた。
ところで、女密偵フォン・リンデン伯爵夫人が受け取ったドイツ外務省の通牒つうちょうである。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
怪しげなる男、童子一名つれて、江戸城の軍学家北条安房あわの密命をうけて上方へ潜行す——と、関東の味方の者から通牒つうちょうのあったことだ。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いっぽうロス氏の電話を受け取った所轄しょかつ署はさっそく管内に散らばる警官に非常通牒つうちょうを発してロス兄弟の影を見張らせたが、虫の知らせとでもいおうか、署長はこれだけではなんとなく不安を感じて
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
侮辱的な最後通牒つうちょうをフランスに送っていた。
然し、この七日間の日割などは、高家から示されなくとも、当然拝命の日に、閣老から通牒つうちょうが来ているのであって、自分の知らない事ではなかった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
物見の者の通牒つうちょうを綜合してみると、搦手からめて方面の大通寺山には、武田信豊、馬場信房、小山田昌行まさゆきなどの二千人。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
でかれは、出発にさきだって鞍馬くらま果心居士かしんこじ小太郎山こたろうざん龍太郎りゅうたろう小文治こぶんじなどの同志どうし通牒つうちょうをとばしておいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日の寄合よりあい通牒つうちょうも出してあるのに、その席へは顔を出さないで、ここに来て長々と待っていることもせない。その他、鎌倉の連判以来、彼はどうかしている。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
居士こじめいをうけて武州ぶしゅう高尾たかおにいる忍剣のところへいくこと、また過日かじつ小幡民部こばたみんぶから通牒つうちょうがきて、なにごとか伊那丸いなまるの身辺に一大事が起っているらしいということ、さては
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、岡崎にも、すぐ通牒つうちょうがまわったので、彼の所在は、きびしく詮議せんぎされていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっとも、新座主ざすの登岳は、今日ということに、半月も前から叡山へは通牒つうちょうしてあるので、それをたがえれば、中堂の人々や、一山の大衆に多大な手ちがいをかけなければならないから
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曹操からの「最後通牒つうちょう」である。われにくだって共に江夏の玄徳を討つや。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(おそらくこれが、御本城への、最後の通牒つうちょうと相成るでしょう)
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
またそれには、強硬な最後通牒つうちょうの意味もある。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)