身装なり)” の例文
旧字:身裝
「主命だぞっ」この腕白者は、身装なりこそ小さいが、口は大人を負かしそうであった。主命といわれて、家来たちは、持てあました。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私はどんな醜い女とでも喜んで歩くのだが、どんな美しい女でもその女が人眼に立つ奇抜な身装なりをしている時は辟易するのがつねであった。
世相 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
或る日私が学校から帰ってくると、途中で、汚い身装なりをした労働者風な男が、にこにこ愛相笑いをして近づいて来た。
教えなかったのは私はこんな尾羽おは打ち枯らした貧乏くさい生活をしているのに柳沢はいつも洒瀟こざっぱりとした身装なりをして
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
大抵きちんとした身装なりをして、庭の方は職人まかせにして、自身は花をけたり、書画をいじったりして暮している内気な房吉は、どうかすると母親から
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あんな身装なりで来られちやとても堪らんからね。お店でも、僕の親父は日本運輸の重役だと思つてゐるんだもの。
茜蜻蛉 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
今日こんにち身装なりこしらえがくすんでも居ず華美はででも無い様子、ちょっと適当のなりに拵え、旧九月四日の事でございましたが、南部なんぶあい万筋まんすじの下へ、琉球りゅうきゅうの変り飛白がすり下著したぎ
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何べんもいうようだけれど、爺さんは欲張りで、倹約けんやくだなんて大金持ちの癖に、いつでも薄汚い身装なりをしているもんだから、何とか議員だって警察には通じやしないわ。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
とても五百石とはいかねえが、一家七人安気あんきに喰えるようなところへ、取りつかせて見せます。身装なりは悪いが、これでなかなか強面こわもてがきく。大名も小名も、みな手前の朋友のようなもんです。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
うなずく眼から、自分でも計らぬもののように、涙がこぼれた。十五とは見えない程、この小娘は身装なりは小さいし、言葉もひどくませていた。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貴女あなたのことをね、顔にぺたぺた白粉おしろいも塗らず、身装なりも堅気のようで、あんな物堅い芸者もあるのかと、飛んだところで、おめにあずかったそうよ。」
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
女子供はみんな身装なりをして来るから、貴方もお筆さんに着せくお思いでしょう、また追々おい/\春の手間で差引きますが、年頃の娘の事ですから皆の身装を見たらうらやましくも思いなさろう
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「今日お前はいつものよそゆきと違って大変ちょくうぶ身装なりをしているねえ」
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「お祭なのに、まだこんな身装なりなのよ。」
陽に酔つた風景 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
お島はその身装なりで、親しくしているお顧客とくいをまわって行った。その中には若い歯科医や弁護士などもあった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
羽織はおりのお色気いろけ取合とりあひいこと、本当ほんたう身装なりこさへ旦那だんなが一ばん上手じやうずだとみんながさうつてるんですよ、あのね此春このはる洋服やうふくらしつた事がありましたらう、黒の山高帽子やまたかばうしかぶつて御年始ごねんしかへり
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
身装なりなんか、何様な風をしている?」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
出来るだけ立派な身装なりをして、自身浅井の知合いの家を尋ねまわるかと思うと、絶望的な蒼い顔をして、髪も結わずに、不断着のままで子供をつれて近所を彷徨うろついたり
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
金「あゝ云う遠慮深い人だから身装なりがあの通りだからって寄越すめえ」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
成金の令嬢か新造しんぞの着る様な金目のものを取寄せて、思いきったけばけばしい身装なりをして、劈頭のっけに姉を訪ねたとき、彼女は一調子かわったお島が、何を仕出来しでかすかと恐れの目をみはった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
仕舞って置いたって折切おりきれます、たれにも遣る者はなし詰らんわけだから着せて下さい、綺麗な身装なりをして出入ではいりをして下されば私も鼻が高い、今だって汚くもなんともない、私の綿入羽織が有ったろう
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ほんとにお前さんは、憎いような身装なりをするよ。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「どんな身装なりで来た。」
花が咲く (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)