警蹕けいひつ)” の例文
さあ、もうそろそろ始まるぞと思っているうちに、動座どうざ警蹕けいひつを合図に全町の灯火がひとつ残らずいっせいにバッタリと消される。
顎十郎捕物帳:23 猫眼の男 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
あわてて有背後うしろに隠して、おやじめ皮肉なことをしやアがる……隣近所、気まずい眼顔をあわせていると、シーッ! シッ! と警蹕けいひつの声。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
やがてシッ/\という警蹕けいひつの声が聞えますと、正面に石川土佐守肩衣かたぎぬを着けて御出座、そのうしろにお刀をさゝげて居りますのはお小姓でございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
十二旒のかんむり、金銀の乗用車、すべて天子の儀をならい、出入には警蹕けいひつして、ここに彼の満悦なすがたが見られた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たちまち警蹕けいひつの声が内からきこえて、衛従の者が紅い絹をかけた金籠の燭を執ること数十つい、そのなかに黄いろい衣服を着けて、帝王の如くに見ゆる男一人
シーッと掛かった警蹕けいひつの声! ここは柳営大廊下、悠々と進むは薬草道人、すなわち甲斐の徳本である。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それは国王や大官の路を往く時に警蹕けいひつするような声であった。その声はしだいに近くなってきた。
申陽洞記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そこでおれはちよつと手を擧げて、『いやなに、警蹕けいひつには及ばん!』と言つて、さつさと戸外そとへ出てしまつた。おれはその足で眞直に局長の邸へ𢌞つた。局長は不在だつた。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
忍びやかに短く立てる警蹕けいひつの声や、若い男の口ずさむ流行唄や、この浮き浮きした夜の情調をあとに家路に急ぐ「まめ人」などによって描いているごとき(ありがたきもの)。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
小田島は「やあ」と日本語で云って仕舞った——イベットの服装はひだがゴシック風に重たくくびれ、ラップの金銀のはく警蹕けいひつの音をたてて居る。その下から夜会服の銀一色が、を細く曳いて居る。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と——警蹕けいひつの声とともに、家臣たちがひらめのごとく土下座している中を、伊豆守とおぼしき人が先頭で、うしろに一見高貴と見ゆるおんかたを導きながら、しずしずと東亭へおなりになりました。
老爺ぢい警蹕けいひつめいたこゑを、われくちくつわける。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
持同心跪踞ひざまづき居る時に警蹕けいひつの聲ともろともに月番の老中志州ししう鳥羽とばの城主高六萬石從四位侍從松平右近將監しやうげん乘包のりかね殿上座に着座ちやくざあり右の方三でふほど下り若年寄上州館林たてばやしの城主高五萬石從五位に朝散太夫てうさんのたいふ太田備中守源資晴すけはる殿引き續いて寺社奉行丹羽たんば國永井郡園部そのべの領主高二萬六千七百石從五位朝散太夫小出信濃守藤原英貞ふぢはらひでさだ殿大目付には
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はッ、と今の今までがやがやしていた連中が慌てて平伏すると、やがて、しいッ、しッ! と警蹕けいひつを掛けながら、二人のお小姓が御用箱を目八分に捧げて先に立つ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
とこうする間に、正面の席の左右へ銀燭が据え置かれると、叱ッ叱ッという警蹕けいひつの声と共に、開け放たれた襖の奥からゾロゾロと六、七名の柿色の修験者が現われた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
警蹕けいひつの声やがて高く、正面の襖左右に開いて上座に悠然と現われ出たのは城主花村甚五衛門である。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たちまちに道を払う警蹕けいひつの声が遠くきこえました。
橘の坪の静かな屋の内に、権阿弥ごんあみと他一名の同朋の声が、そう警蹕けいひつするように奥へ伝えた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しッ、しい——ッ、と側で警蹕けいひつの声がかかる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
警蹕けいひつの声! 下城してしまった。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、警蹕けいひつの声を発しながら、酒席の中央に、立ち現われた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、しいっしっという警蹕けいひつの声。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
やがて警蹕けいひつの声がした。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
などと、警蹕けいひつのあいだにも、ささやく声が流れる。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、警蹕けいひつのように叫びながら走って来た。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いまも警蹕けいひつ
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)