しるし)” の例文
天公てんたうさま機状からくりのしかけかの妙法寺村の火とおなじ事也。かれは人のる所、是は他国の人のしらざる所なればこゝにしるし話柄はなしのたねとす*3
清葉とお孝の名をしるしにした納手拭おさめてぬぐいの、一つは白く、一つは青く、春風ながら秋の野にくずの裏葉のひるがえる、寂しき色にでてそよぐを見つつ、去るに忍びぬ風情であった。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
背のかど隅入すみいりで、厚みも多く形もよく、家のしるしなのかこれに瓢箪ひょうたん模様が一個入れてあった。つかもいい。だがそれだけではなかった。今まで見たどの五徳ごとくよりも美しい形のものがあった。
思い出す職人 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
言訳なくして身を投げて死んだに相違有るまい、なさけない事である、死んだしるしに衣類を脱ぎ捨て帯を縛り附けて置いたものだろうと、旧来奉公していた者ゆえ、主人始め家内も娘も皆心配致し
胡亂々々うろ/\いたし候處へ御武家樣おぶけさま御通り掛り成れ候て其方は駈込訴訟かけこみそしようかと御聞成おきゝなされ候間然樣さやうなれども如何して宜敷よろしきやと承まはり候へば斯樣々々かやう/\致せと御教へなされ其上訴状は持來もちきたりしかと御尋おんたづねゆゑ之なくと申ければしからば認めつかはすべしとてしるして下され候と申べしそれさへ云へばあとは此方の物むかふが大岡樣なれば何事もさつあるべしと教へ平兵衞は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
雪頽なだれといふ事初編しよへんにもくはしくしるしたるごとく、山につもりたる雪二丈にもあまるが、春の陽気やうきしたよりむし自然しぜんくだおつる事大磐石だいばんじやくまろばしおとすが如し。
いよいよとなると、なお聞きたい、それさえ聞いたら、亡くなった母親の顔も見えよう、とあせり出して、山寺にありました、母の墓をゆすぶって、しるしの松に耳をあてて聞きました、松風の声ばかり。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それに此の金側きんがわの時計も別してしるしのある訳でない、お持料もちりょうになされて下さい、ほかの物は記が有りますから………此処にあなた様が居ると、もし夜廻りの者が参っては相成りませんから、お早く往って
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
雪頽なだれといふ事初編しよへんにもくはしくしるしたるごとく、山につもりたる雪二丈にもあまるが、春の陽気やうきしたよりむし自然しぜんくだおつる事大磐石だいばんじやくまろばしおとすが如し。