裏面うら)” の例文
あの人はエライ人だとか、何だとか言われる人でも、私は直にその人の裏面うらを見ちゃってよ——妙に、私には解るの——解るように成って来るの
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
谷山家の養子事件を裏面うらからアヤツリ廻して来た、冷血残忍なAの手の動きを、ハッキリと見透かしながら、お話する事が出来るのですからね……。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この女の素性にける彼の疑はますます暗くなりぬ。夫有つまもてる身の我は顔に名刺を用意せるも似気無にげなし、まして裏面うらに横文字を入れたるは、猶可慎なほつつましからず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかし、こちらの世界せかいて、だんだん裏面うらから、人間にんげん生活せいかつながめることが、できるようになってると、自分じぶん間違まちがっていたことがよくわかるようになりました。
頭の毛は赤いインキで塗ってある。裏面うらには「是でも申込んだのよ」と書いてある。赤旦那が青旦那に変色した頃は、乃公は干葡萄をもう一掴み貰って、外へ出て躍っていた。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
中には父兄の使嗾しそうによって、かえって盛んに自尊心を高ぶらす者もあるやに聞きますが、しかもその裏面うらにおいて、いっそう気の毒な心の底のあることを、考えねばなりません。
融和促進 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
たうたかさ三じやくすん三尖方形さんせんほうけい大理石だいりせきで、そのなめらかなる表面ひやうめんには「大日本帝國新領地朝日島だいにつぽんていこくしんりようちあさひとう」なる十一ふかきざまれて、たふ裏面うらには、發見はつけん時日じじつと、發見者はつけんしや櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさとが
ははあ、文盲もんもうとみえるな。読んで聞かせる。その裏面うらを返してみい。——楮幣チヨヘイハ銅幣『乾坤通宝ケンコンツウホウ』ト同ジクアハセ用ヒ、一切ノ交易ニトドコホリアルナカレ——としてあるのだ。よくおぼえておけ。
よるは黒…………銀箔ぎんぱく裏面うらの黒。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
おお厳粛な一面の裏面うら
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
裏面うらには伶人ぬかをたれて
古盃 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
「すっかり私は叔父さんの裏面うらを見ちゃってよ——三吉叔父さんという人はよく解ってよ」こう骨をえぐるような姪の眼の光を、三吉は忘れることが出来なかった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その得意そうな背後うしろ姿を睨みながら、戸塚が地下足袋の裏面うらをチョット裏返してみた。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あるひは、貴方等の目から御覧に成つたらば、吾儕わたしども事業しごと華麗はででせう。成程なるほど表面うはべは華麗です。しかし、これほど表面が華麗で、裏面うらの悲惨な生涯しやうがいは他に有ませうか。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それからのちは一人で留守番をするたんびに、少しずつ裏面うらの紙を引きいで壊れた幻燈の眼鏡めがねで糸の配りを覗いては、絳絹もみ布片きれに写しておりましたが、見付かると大変ですから
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)