ぜみ)” の例文
……すぐ頭の上でひぐらしぜみが鳴いているのだった。いま近づいて来る足音が新島八十吉であることは、猿橋の駅あたりから二人にはわかっていた。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
りつけるやう油蝉あぶらぜみこゑ彼等かれらこゝろゆるがしてははなのつまつたやうなみん/\ぜみこゑこゝろとろかさうとする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ニイニイぜみの声のような連続的な音が一つ、それから、油蝉あぶらぜみの声のような断続する音と、もう一つ、チッチッと一秒に二回ぐらいずつ繰り返される鋭い音と
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
他家よその世話女房をたしなめる程、子供に似げない才覚や生活の自衛を心得ているかと思うと、もうすぐ樹の肌に止っているミンミンぜみを見つけて、それに気をられていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
公園にはいると、カナカナぜみの声が、降るようだった。御殿山。宝亭は、すぐにわかった。料亭と旅館を兼ねた家であって、老杉に囲まれ、古びて堂々たる構えであった。
花火 (新字新仮名) / 太宰治(著)
あつさはうです。……まだみん/\ぜみきませんね、とふうちに、今年ことし土用どようあけの前日ぜんじつからとほくにこえた。カナ/\は土用どようあけて二日ふつかの——大雨おほあめがあつた——あのまへからした。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あぶらぜみの、じじ、じじとくは
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
まつからはみんみんぜみやう松蝉まつぜみこゑくすぐつたいほどひと鼓膜こまくかるひゞいてすべてのこゝろ衝動しようどうする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あぶらぜみ、みんみん蝉、日光山がジイ——ッと啼いているようだ。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)