葉末はずえ)” の例文
それはどっちとも解らないが物語はここで岐路へはいり、牢番のおさ、石右衛門と石右衛門の娘葉末はずえについて少しく説明をしなければならない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あの高原こうげんにいるころ、あかつきかぜが、あたまうえそらわたり、葉末はずえつゆのしずくのしたたるとき、ほしひかりが、無数むすうにきらめいていた。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一議いちぎに及ばず、草鞋わらじを上げて、道を左へ片避かたよけた、足の底へ、草の根がやわらかに、葉末はずえはぎを隠したが、すそを引くいばらもなく、天地てんちかんに、虫の羽音はおとも聞えぬ。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
庭にあるほどの草も木もしずかに眠って、葉末はずえこぼるる夜露の音もきこえるばかり、いかにも閑静しずかな夜であった。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
天が今日は実に近い 手のとどきそうな近さだ 草もそれを知っている だから謙虚に葉末はずえを垂らしている
死の淵より (新字新仮名) / 高見順(著)
なかば黄いろくなかば緑な林の中に歩いていると、澄みわたった大空が梢々こずえこずえの隙間からのぞかれて日の光は風に動く葉末はずえ葉末にくだけ、その美しさいいつくされず。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
でて葉末はずえの露の皆動く
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
黒檀こくだんのみどり葉末はずえ
文月のひと日 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
蘆の葉末はずえに水をせて、昼の月の浮いて映るがごとく、沼のそこに、かいなか、肩か、胸か、乳か、白々とただよい居る。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其中そのなかから輝くのは葉末はずえの露の如き眼の光であった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かやにも尾花にも心を置いて、葉末はずえに目をつけ、根をうかがひ、まるで、美しいきのこでも捜す形。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
目まぐるしきばかり、靴、草鞋わらんじの、かばかかと灰汁あくの裏、爪尖つまさきを上に動かすさへ見えて、異類異形いぎょういなごども、葉末はずえを飛ぶかとあやまたるゝが、一個ひとつも姿は見えなかつたが、やがて
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)