苦惱くなう)” の例文
新字:苦悩
また私のむねやはらぎの芽をゑそめたものは、一頻ひとしきり私のはらわたきざんでゐたところの苦惱くなうんだ、ある犧牲的ぎせいてきな心でした。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
野田のだへはらせてくれめえか」といた。勘次かんじ近所きんじよもの卯平うへいらせることもわすれてたゞ苦惱くなうする病人びやうにんまへひかへてこまつてるのみであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
失望しつはう煩悶はんもんとがごツちやになツてへず胸頭むなさき押掛おしかける………其の苦惱くなう、其のうらみ、誰にうつたへやうと思ツても訴へる對手あひてがない。喧嘩けんくわは、ひとりだ。悪腕わるあがき
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
かれ從來じうらいたことのない綺麗きれい菓子くわし發見はつけんしたとおもつてこゝろをどつた。それでもかれ半分はんぶんつていきなりくだした。かれのどがぢり/\とげつくほど非常ひじやう苦惱くなうかんじた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しな夕刻ゆふこくからにはかに痙攣けいれんおこつた。身體からだがびり/\とゆるぎながらあしめられるやうにうしろつた。痙攣けいれん時々ときどき發作ほつさした。そのたびごと病人びやうにんられないほど苦惱くなうする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)