繁華はんか)” の例文
よほど辺鄙へんぴな所にあるのだからでしょう。けれどもたとい繁華はんかな所にいたって、そう始終しじゅう家を引ッ張ッてッて貰わなければならぬという人はない。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今ではみんなそこから出てきて、樹かげの繁華はんかは芝生に奪はれてしまつた。杉のひく影が日ましに長くなつて、芝生一めんに秋の日ざしがかぐはしい。
灰色の眼の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
むかしは、このあたりは、繁華はんかまちがあって、いろいろのみせや、りっぱな建物たてものがありましたのですけれど、いまは、れて、さびしい漁村ぎょそんになっていました。
海のかなた (新字新仮名) / 小川未明(著)
砂地のけつくようなの直射や、木蔭こかげ微風びふうのそよぎや、氾濫はんらんのあとのどろのにおいや、繁華はんか大通おおどおりを行交う白衣の人々の姿や、沐浴もくよくのあとの香油こうゆにおい
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それもあかつきの南京路の光景から、あけをうけた繁華はんかな時間の光景から、やがて陽は西にかたむき夜のとばりが降りて、いよいよ夜の全世界とした光景、さては夜もけて酔漢すいかん
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
繁華はんか光栄の美麗もなくて
またある繁華はんか雑沓ざっとうをきわめた都会とかいをケーがあるいていましたときに、むこうからはしってきた自動車じどうしゃが、あやうくころすばかりに一人ひとりのでっち小僧こぞうをはねとばして
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼は小供の時分よく江戸時代の浅草を知っている彼の祖父じいさんから、しばしば観音様かんのんさま繁華はんかを耳にした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それと入れ代って、繁華はんか南京路ナンキンろの往来では、にわかに騒ぎがはじまった。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「どこへみんないってしまったのですか。」と、宝石商ほうせきしょうは、むかし繁華はんか姿すがたおもいうかべてたずねました。
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)
朝日あさひひかりは、繁華はんかまち建物たてもののいただきをして、プラットホームにながれていましたが、そこへ、けたあかかお少女しょうじょが、なえりきをしてあるいてきたので
赤いえり巻き (新字新仮名) / 小川未明(著)
東京とうきょうまちは、ひろいのでした。大海たいかいに、いしげたようなものです。ちいさな、一つのさかずきはこの繁華はんかな、わくがように、どよめきのこる都会とかいのどこにいったかしれたものではありません。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると、ややおおきな繁華はんかまちがあったのです。
おかしいまちがい (新字新仮名) / 小川未明(著)