紙屑かみくづ)” の例文
二人はあんまり心を痛めたために、顔がまるでくしやくしやの紙屑かみくづのやうになり、お互にその顔を見合せ、ぶるぶるふるへ、声もなく泣きました。
注文の多い料理店 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
爲しつゞ現在げんざい弟の千太郎の事を思ひて紙屑かみくづかふと迄に零落おちぶれても眞の人に成んと思ひ赤心こゝろの誤よりもいきの根の止たを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
パンの破片かけら紙屑かみくづうしほねなど、さうしてさむさふるへながら、猶太語エヴレイごで、早言はやことうたふやうにしやべす、大方おほかた開店かいてんでも氣取きどりなにかを吹聽ふいちやうしてゐるのでらう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
文庫ぶんこなかかられた、手紙てがみ書付類かきつけるゐが、其所そこいらに遠慮ゑんりよなくらばつてゐるなかに、比較的ひかくてきながい一つうがわざ/\二しやくばかりひろげられて、其先そのさき紙屑かみくづごとまるめてあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これがなければ、どんな通俗小説も市場価値においては、紙屑かみくづ同然である。現に、今日楽しんで読まれさへすれば、明日は屑籠くづかごに投込まれても本望だと揚言してはばからない作家がある。
「えツ、こんな紙屑かみくづのやうな人間にんげんでも、かわいさうにおもつてくださいますか」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
おぼえさせまた金者かなもの相針あひばりはいくらにあかゞねつぶしにして何程といふ相場をきゝ一々手覺ておぼえに書留かきとめさせて歸りしが夫より長八夫婦は店住たなすまひとなり翌日よりかごかつぎ紙屑かみくづ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
賣歩行うりあるきとき晋子しんし其角きかくが贈りし述懷じゆつくわい名吟めいぎんなる事は世の人の知る所にしてに定めなきは人の身の上ぞかし偖も越後浪人新藤市之丞が心がらとは云ひながら今は紙屑かみくづ屋長八と名乘なのり裏店うらだな住居ずまひとなりしかど追々商賣に身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)