“端舟(はしけ)” の例文
敦賀(つるが)は良津(りやうしん)ゆゑ苦勞(くらう)はないが、金石(かないは)の方(はう)は船(ふね)が沖(おき)がかりして、波(なみ)の立(た)つ時(とき)は、端舟(はしけ)で二三里(にさんり)も揉(も)まれなければ成(な)らぬ。此(これ)だけでも命(いのち)がけだ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
水の瀬が開ける音がしたのは一隻の端舟(はしけ)が、櫓(ろ)の音も忍びやかに両国橋の下を潜って、神田川へ乗り込み、この辺の河岸(かし)に舟を着けようとしているものらしい。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ただちに端舟(はしけ)を漕いでその舷門に至り、言語通ぜねば手真似をもって便乗をこい、船長の拒むをしいて、二百ドルの金貨を握らせ、ようやく便乗を許されしなり。
南極の怪事 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
懐中ものまで剥取(はぎと)られた上、親船(おやぶね)、端舟(はしけ)も、斧(おの)で、ばら/\に摧(くだ)かれて、帆綱(ほづな)、帆柱(ほばしら)、離れた釘は、可忌(いまわし)い禁厭(まじない)、可恐(おそろし)い呪詛(のろい)の用に、皆(みんな)奪(と)られて了(しま)つたんです。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その日の亥(い)の刻(こく)に江戸橋を立つ木更津船(きさらづぶね)は、あえて日和(ひより)を見直す必要もなく、若干の荷物と二十余人の便乗の客を乗せて、碇(いかり)を揚げようとする時分に、端舟(はしけ)の船頭が二人の客を乗せて
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
冬分(ふゆぶん)は往々(わう/\)敦賀(つるが)から來(き)た船(ふね)が、其處(そこ)に金石(かないは)を見(み)ながら、端舟(はしけ)の便(べん)がないために、五日(いつか)、七日(なぬか)も漾(たゞよ)ひつゝ、果(はて)は佐渡(さど)ヶ島(しま)へ吹放(ふきはな)たれたり、思切(おもひき)つて、もとの敦賀(つるが)へ逆戻(ぎやくもど)りする事(こと)さへあつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
抵抗(てむかひ)も成(な)らず裸(はだか)にされて、懷中(くわいちう)ものまで剥取(はぎと)られた上(うへ)、親船(おやぶね)、端舟(はしけ)も、斧(をの)で、ばら/\に摧(くだ)かれて、帆綱(ほづな)、帆柱(ほばしら)、離(はな)れた釘(くぎ)は、可忌(いまはし)い禁厭(まじなひ)、可恐(おそろし)い呪詛(のろひ)の用(よう)に、皆(みんな)奪(と)られて了(しま)つたんです。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)