空腹すきはら)” の例文
と/\が空腹すきはらに酒を飲んだやうなものでグデン/\に騒ぎ立つた挙句が嘔吐へどいて了うとヘタ/\に弱つて医者の厄介になると同様だ。
青年実業家 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
名物にうまき物ありて、空腹すきはら須原すはらのとろゝ汁殊のほか妙なるにめし幾杯か滑り込ませたる身体からだ此尽このまま寝さするも毒とは思えどる事なく、道中日記しまいて
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
無闇に腹を立てゝ、汽車から降りると、空腹すきはらのまゝ永辻の家へ駆けつけたりしたのが悪かったんでしょうね。
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
土もついているらしいいもの汁も、空腹すきはらには珍味である。山盛三杯の飯を平げて、湯も飲まずに食事を終った。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
他には誰も来なかったので、紳士は食物たべもの一つありませんでした。そこでれいの紳士は、空腹すきはらを抱えて何か食べるものを買おうと村へ行って、あるうちに入りました。
イワンの馬鹿 (新字新仮名) / レオ・トルストイ(著)
どさくさ紛れに葛籠つづら箪笥たんす脊負しょい出そうッて働きのあるんじゃありませんがね、下がったあわせのじんじん端折ばしょりで、喞筒ポンプの手につかまって、空腹すきはらあえぎながら、油揚あぶらげのお煮染で
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はその匂を嗅ぐと、いっそう空腹すきはらがたまらなくなって、牽々ぐらぐらと目がまわるように覚えた。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
空腹すきはらにおよんでさむさたへず、かくては貴殿おみさまともなひて雪をこぐことならず、さいぜんのはなしにおみさまのふところ弁当べんたうありときゝぬ、それを我にあたへたまふまじきや、たゞにはもらふまじ、こゝに銭六百あり
お庄は空腹すきはらを抱えながら、公園裏の通りをぶらぶら歩いたり、静かな細い路次のようなところにたたずんで、にじみ出る汗をたもとで拭きながら、いつまでもぼんやりしていることがたびたびあった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
空腹すきはらにおよんでさむさたへず、かくては貴殿おみさまともなひて雪をこぐことならず、さいぜんのはなしにおみさまのふところ弁当べんたうありときゝぬ、それを我にあたへたまふまじきや、たゞにはもらふまじ、こゝに銭六百あり
私は汗じみた手拭を、懐中ふところから——空腹すきはらをしめていたかどうかはお察し下さい——懐中から出すと、手代が一代の逸話として、よい経験を得たように、しかし、きたならしそうに、つまんでひろげました。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひどい空腹すきはらの処へ、素的に旨味うまそうだから、ふうふう蒸気いきの上る処を、がつがつして、加減なしに、突然いきなり頬張ると、アチチも何もない、吐出せばまだ可いのに、かつえているので、ほとんど本能のいきおい
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
空腹すきはらにこたえがないと、つよくひもをしめますから、男だって。……
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、め組のその素振に目を着けて、主税は空腹すきはらだというのに。……
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)