穂尖ほさき)” の例文
穂尖ほさきの閃光流星の一文字にツイと走って、あなや、鐘巻自斎の喉笛を突き貫ぬいたかと見えたが、カラリと響いた鉄扇の音をはじいて
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊兵衛は中也派を学んだが、そのうえに薙刀の法を加えて、穂尖ほさきよりも石突きに重点をおくような、特殊な操法を会得していた。
雪の上の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
丁度甲州流の戦法のように隙間すきまなくやり穂尖ほさきそろえてジリジリと平押ひらおしに押寄せるというような論鋒ろんぽうは頗る目鮮めざましかった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
その火影は寒さにって、穂尖ほさきが細く、しんが赤くなって、折々自然にゆらゆらとひらめくのが、翁の姿を朧気おぼろげに照していた。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
高い岩壁に沿うて十丈又は十五丈もある黒鉄色の岩礁が二三本鎗の穂尖ほさきの様に鋭く並んで聳え立って居る。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
キクッタは電光いなづまのやうにそれを拾ひ上げると、二三歩前へ進み出で、穂尖ほさきを大熊の胸につきつけ、石突きを地面に当てがひ、柄をしつかり握つたまゝ、そこへうづくまりました。
熊捕り競争 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
青白く光らして、柄頭つかがしらぐいとこきあげながらその胸元へ突きつけると、もうどうしようもない。腕には諸羽流もろはりゅうの術がある。柄頭ながらそのひと突きは大身槍の穂尖ほさきにもまさるのです。
戸外そとは、たらいの水を叩きつけるよう、ごうっ! と地を鳴り響かせて降りしきる山の豪雨である。まっ黒な風が横ざまに渦巻いて、百千の槍の穂尖ほさきを投げるような、太い、白く光る雨あし。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
傾いたふなべりから、二にん半身を乗りいだして、うつむけに海をのぞくと思うと、くろがねかいなわらびの手、二条の柄がすっくと空、穂尖ほさきみじかに、一斉に三叉みつまたほこを構えた瞬間、畳およそ百余畳、海一面に鮮血からくれない
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
殿とのにつきそふ槍持の槍の穂尖ほさきの悲しさよ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いつのまにか、卜斎ぼくさい蛾次郎がじろうのまわりには、十数槍すうそう抜身ぬきみ穂尖ほさき、音もせずに、ただ光だけをギラギラさせて、すすきのようにえならんでいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みんな小具足を着け、武者草鞋わらじ穿き、いかめしい武器を手にしている、その一人の持っている素槍の穂尖ほさきが、月光をうつしてぎらぎらと光っていた。
山だち問答 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と目のさき穂尖ほさき危なし。顔を背け、身をそらし、袖をかざして
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
制しようもない忿怒ふんぬに駆られて、藤六は大きく地をりながら突っ込んだ、たんぽの穂尖ほさきは鉄之助の左の高腿たかももに三寸あまりも突刺さり、藤六がひき抜くと血がはしった。
足軽奉公 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あッ——わッ、という声と一緒に、駕の中へズバリと入った真槍の穂尖ほさき
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きびしい、まるで槍の穂尖ほさきとも譬えたいようなお眼だった
日本婦道記:桃の井戸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
素槍の穂尖ほさきが月を映してぎらっと光った。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)