祭文さいもん)” の例文
「大事にもなんにも、浄瑠璃や祭文さいもんで聞くお半と長右衛門が逃げ出したのなんぞより事が大きいでがすから、町の役人たちも騒ぎました」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まず御定おきまりの活惚かっぽれの小屋が掛かる。するとデロレン祭文さいもんが出来る(これは浪花節なにわぶしの元です)。いずれも葭簀張よしずばりの小屋掛け。
ちょうど主僧のお経がすんで知事代理が祭文さいもんを読むところであった。その太いさびた声が一しきり広い本堂に響きわたった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
両国の野天講釈や祭文さいもんで聞きおぼえた宮本無三四むさしや岩見重太郎や、それらの武勇譚が彼の若い血を燃やして、清水山の妖怪探索を思い立たせた。
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
村の或家さ瞽女ごぜがとまったから聴きにゆかないか、祭文さいもんがきたから聴きに行こうのと近所の女共が誘うても、民子は何とか断りを云うて決して家を出ない。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
鴎外はこの祭文さいもんを太子一千三百年遠諱記念の式場において、美術院長の資格で読み上げたことになっている。大正十年四月十五日である。これは確な資料に違いない。
洩りてえりる淺間の山の雪おろし弓なりに寐るつる屋の二階是等も何ぞの取合せと思ふ折しも下屋したや賑はしく馬士まご人足のひたるならん祭文さいもんやら義太夫やら分らぬものを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
「でろでろ祭文さいもん」や「居合抜き」「どっこいどっこい」の賭博かけもの屋から「銅の小判」というような、いかもの屋までも並んでいる。そういう間に介在かいざいして、飲食店ができている。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ハハァ、天狗様がまつってあるのだな、これは御挨拶を申さずばなるまい」と、そこで髯将軍はうやうやしく脱帽三拝し、出鱈目でたらめ祭文さいもんを真面目くさって読み上げる。その文言もんくいわ
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
ただ神仏は商人のように、金銭では冥護みょうごを御売りにならぬ。じゃから祭文さいもんを読む。香火をそなえる。このうしろの山なぞには、姿のい松が沢山あったが、皆康頼にられてしもうた。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今までキチガイ地獄のチョンガレ祭文さいもんの中で唄っておられた『狂人の解放治療』という実験を、実際に着手されまして、又も異常な反響を一般社会に喚起される事になったのです。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
祭文さいもんに歌われた信濃屋お半の夢は、死という夢を美しくみながら川にはいりましたが、この二人はあくまで強く生きようとする体と体を重ねながら、水を踏んでゆくのであります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先年東京から祭文さいもん語りが来て、佐倉宗吾の話をした時、降り積む雪は二尺あまりというたので、気早の若者は、馬鹿を吐け、山の中じゃああるまいしと、大いに怒ってなぐりつけたという。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
人形舞にんぎょうまわしとか、猿舞わしだとか、祭文さいもん・ほめら・大神楽だいかぐら・うかれ節などを始めとして、田楽でんがく猿楽さるがく等の類まで、もとはみなこの仲間でありまして、遂には歌舞伎役者とまでなって参ります。
たとえばニライ・ニルヤという言葉は、神歌祭文さいもんの衰微とともに、軽々しく日常の話に交え用いなくなって、追々と姿を隠して行くが、そのかわりになる名詞が、少しずつ後から生まれている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
衆人めぐり見る中へ、その姿をあの島の柳の上へ高くあらわし、大空へ向って拝をされい。祭文さいもんにも歌にも及ばぬ。天竜、雲をり、らいを放ち、雨をみなぎらすは、明午を過ぎてさるの上刻に分豪ふんごうも相違ない。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
でろりん祭文さいもん半公はんこう
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あの祭文さいもんを聞いてから急に武者修行をやってみたくなった、そこで友様、済まねえがお前は武芸の方で、俺のお弟子分になってもらいてえ、そうして、木曾街道から名古屋、京大阪をかけて
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そんな祭文さいもんが終ってから、道人は紫檀したんの小机の上へ、ぱらりと三枚の穴銭をいた。穴銭は一枚は文字が出たが、跡の二枚は波の方だった。道人はすぐに筆を執って、巻紙にその順序を写した。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
衆人しゅうじんめぐり見る中へ、其の姿をあの島の柳の上へ高くあらわし、大空に向つてはいをされい。祭文さいもんにも歌にも及ばぬ。天竜てんりゅう、雲をり、らいを放ち、雨をみなぎらすは、明午みょうごを過ぎてさる上刻じょうこく分毫ふんごうも相違ない。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)