社家しゃけ)” の例文
兵馬の槍は格にった槍、大和の国三輪みわ大明神の社家しゃけ植田丹後守から、鎌宝蔵院の極意ごくいを伝えられていることは知る人もあろう。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのほか、将門の前をはばめたり、敵対したりした郷吏ごうりの小やしきだの、社家しゃけだの、民家だの、貯備倉だの、焼きたてた数はかず知れなかった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一、翌日より大工頭、下奉行等社家しゃけ一同の先達せんだつにて、御本社ごほんしゃ、拝殿、玉垣を始め、仮殿かりでん御旅所おたびしょにいたるまで残らず見分。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
山城の賀茂は社家しゃけでいながら、賀茂村から比叡山の水呑みずのみに達する広大な領地をもって居り、一族の女たちは国学と古文こぶんに凝りかたまって、みな独身で終ってしまう。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
かくて社家しゃけかた樹立こだちる。もみじに松をまじう。社家は見えず。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
娘は社家しゃけ葛城藤馬かつらぎとうまの長女で稲代いなよというのであった。
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
どこか上品じょうひんで、ものごしのしずかなたびさむらいが、森閑しんかんとしている御岳みたけ社家しゃけ玄関げんかんにたって、取次とりつぎをかいしてこう申しれた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三輪明神の社家しゃけ植田丹後守の邸に厄介になっていた時分と、ここへ来て二三日逗留とうりゅうしている間とが、同じように心安い。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この社家しゃけくずれの女には、これでもう二度も欺された。難産でもするどころか、守札おまもりにも及ばずやすやすと二人も子供を産んでのけ、しどろもどろにあわてさせた。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
このうえは、いっこくもはやく、あの垢離堂から社家しゃけへおうつし申しあげ、また、付人つきびとの忍剣とやらの神縛しんばくもといて謝罪しゃざいするよりほかに手段しゅだんはなかろう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その倅は三輪大明神の社家しゃけ、植田丹後守の屋敷に預けられていたお豊に命がけで懸想けそうした男であります。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
京都のN神社の宮司をしている社家しゃけ華族からきたひとで、柚子の祖母は先帝のおひと、伯母は二人とも典侍に上っているという神道シンドーイズムのパリパリで、柚子の家の神棚には
春雪 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「あらまし、明日の準備を御覧のうえ、社家しゃけに泊っている山田小美濃以下の申楽衆さるがくしゅうへ、御色代ごしきたい(あいさつ)など、あった後、ごきげんようお立ち帰りで」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「三輪大明神の社家しゃけに、植田丹後守というのがござる、これが当流の槍をなかなかよく使うそうじゃが、これもいっこううわさばかりで、誰もその実際を見たものはないと申すことじゃ」
宮内くない竹童ちくどうのたべた土鍋どなべのからと、蛾次郎がじろうべたからを両手にもって、社家しゃけのほうへもどってしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これから程遠からぬ三輪の町に植田丹後守という社家しゃけがある——武術を好んでことのほか旅の人を愛する、そこへ行ってごらんなさいと、長谷の町の町はずれで、井戸の水を無心しながら
ちょうど、北関きたせき裏崖うらがけへ、誰も知らぬ銀の小鳩が下りた頃。その、蝉丸のようにせた老禰宜ねぎが、社家しゃけの一隅に、わびしい晩飯のぜんをすえて、はしをとっていると
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
社家しゃけの門、神社のかつお木、森も奥まッた所に、ゆいの紋幕がソヨ風にはためいている。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「勿論、病床の師にも、あの秘蔵弟子にも、聞かしてはならない。——では、社家しゃけへ参って、筆墨を借り、すぐ書面をしたためて、誰か一名、小次郎の手許へ使いに立つとしよう」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
社家しゃけ様のお宅では、以前からおまえの家でお米を取っているんですか」
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
住吉すみよし社家しゃけの息子さまは、この船にござらっしゃらぬか」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)