眼色めいろ)” の例文
と一生懸命面色めんしょく土気色に変わり、眼色めいろ血走りました。飯島も面色土気色で目が血走りているから、あいこでせえでございます。
足軽たちに話しかけても、だれもウンとも返辞へんじをするものがなかった。かれらの眼色めいろはまだ夜の明けぬまえの異常いじょう緊張きんちょうをもちつづけているらしい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むすめあゆみながら私の顏をぢつと見入ツた。あゝ其の意味深い眼色めいろ!私は何んと云ツて其を形容けいやうすることが出來やう。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
妻の眼色めいろを読もうとしても、主人の貌色かおいろに気をつけても、ただ疑念ぎねんばかりで証拠を押えることが出来ません。斯様こんな処に奉公するじゃないと幾度思ったか知れません。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その物に感染かぶれて、眼色めいろを変えて、狂い騒ぐ時を見れば、如何いかにも熱心そうに見えるものの、もとより一時の浮想ゆえ、まだ真味をあじわわぬうちに、早くも熱が冷めて
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
デミトリチの顔付かおつき眼色めいろなどをひどって、どうかしてこの若者わかもの手懐てなずけて、落着おちつかせようとおもうたので、その寐台ねだいうえこしおろし、ちょっとかんがえて、さて言出いいだす。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
その眼色めいろ……当時眼鏡はかけておりませんでしたが……ギロリと光る眼をきっと見据えまして
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
然るに君、黒船以来毛唐の種が段々内地雑居を初めてから、人間様のなかでも眼色めいろの変つた奴が幅を利かしたが、俺達犬社会では毛唐だねらされてイヤモウ散三な目に遇つた。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
手も足も出なくなった口惜しささえ感じていたのだから……そうして初対面の作法も何もかも忘れて睨み付けていたのだから必ずや容易ならぬ眼色めいろをしていたに違いないと思う。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
妙にすべっこく磨き込まれている様子は、丁度多くの人手にかかって丁寧に拭き込まれた桐の手あぶりの光沢つやに等しく、いつも重そうなまぶたの下に、夢を見ているようなその眼色めいろには
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お葉も眼色めいろを早くも悟った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
なま眼色めいろ燐火フオスフオラスを吸ふ青びかり
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
こう龍太郎がいってふところの独楽こまをだしてみせると、蛾次郎は飛びつきそうな眼色めいろをして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
スリッパを揃えさせて上り込み、九蔵と差向いになって色々と下らない事を話合っているうちに、どうも彼奴きゃつ眼色めいろが物騒だと思いましたから、私一流の早業で不意打にやっつけました。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
アンドレイ、エヒミチはイワン、デミトリチの顏付かほつき眼色めいろなどひどつて、如何どうかして若者わかもの手懷てなづけて、落着おちつかせやうとおもふたので、其寐臺そのねだいうへこしおろし、ちよつかんがへて、さて言出いひだす。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そうして髪毛かみのけや、眼色めいろや、顔色が赤や、白や、鳶色とびいろや、黒等とそれぞれに違った人々が、各自てんでに好きな仕立ての着物を着て、華やかに飾り立てた店の間を、押し合いへしあいして行き違う有様は
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)