相槌あひづち)” の例文
富岡は時々眼をあけて相槌あひづちを打つやうに返事をしてゐたが、人の話なぞどうでもよかつた。萎縮ゐしゆくした無気力さで、さかづきを唇へ運んだ。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
長谷倉甚六郎の心持をはかり兼ね乍らも、亭主は相槌あひづちを打ちました。後ろからは手代の千代松が何やら目頭で合圖をして居ります。
「それは、又、稀有けうな事でござるのう。」五位は利仁の顔と、郎等の顔とを、仔細らしく見比べながら、両方に満足を与へるやうな、相槌あひづちを打つた。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
聞人きくひとなげに遠慮ゑんりよなき高聲たかごゑふく相槌あひづちれい調子てうしに、もう一トはたらきやつてけよう、やすさんは下廻したまはりをたのみます、わたしはも一此處こゝいて、今度こんどはおくらだとて、雜巾ぞうきんがけしつ/\とはじめれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
本當ほんたう他人ひとのやらねえこつてもありやしめえし」女房にようばう相槌あひづちつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いつも滑※こつけい失策しつさくとの本家本元ほんけほんもとで——いまわたくしそばに、威勢ゐせいよくはなし相槌あひづちつて武村兵曹たけむらへいそうは、幾度いくたび軍艦ぐんかん水兵等すいへいらに、背中せなかたゝかれ、たゝかれて、艦中かんちう第一だいいち愛敬者あいけふものとはなつた。
「一体今の文壇には悪友がなさ過ぎるよ。」Y君も相槌あひづちを打つた。
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
『さう/\、左様さういふ話ですなあ。』と文平も相槌あひづちを打つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「道樂に身を持崩して、東海坊の弟子になり、大法螺おほぼら相槌あひづちを打つてトウセンボウとか名乘つたんだろう」
ガラツ八の恐ろしい愚問に舌を卷き乍らも、商人らしく、勘兵衞は素直に相槌あひづちを打ちます。
八五郎は相槌あひづちを打ちました。