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發車
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はつしや
目をつむつて、
耳を
壓へて、
發車を
待つのが、三
分、五
分、十
分十五
分——やゝ三十
分過ぎて、やがて、
驛員に
其の
不通の
通達を
聞いた
時は!
が、やがて
發車の
笛が
鳴つた。
私はかすかな
心の
寛ぎを
感じながら、
後の
窓枠へ
頭をもたせて、
眼の
前の
停車場がずるずると
後ずさりを
始めるのを
待つともなく
待ちかまへてゐた。
が、
此電車が、あの……
車庫の
處で、
一寸手間が
取れて、やがて
發車して
間もなく、
二の
橋へ、
横搖れに
飛んで
進行中。
或曇つた
冬の
日暮である。
私は
横須賀發上り二
等客車の
隅に
腰を
下して、ぼんやり
發車の
笛を
待つてゐた。とうに
電燈のついた
客車の
中には、
珍らしく
私の
外に
一人も
乘客はゐなかつた。
東京驛に
着いたのは、まだ
三十分ばかり
發車に
間のある
頃であつた。
際どい
處か、
發車には
未だ
三分間ある。