きず)” の例文
それを半途に、また、東方に軍事を起すのは、心腹の病をあとにして、手足のきずを先にするようなものでしょう。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人共後悔の瘢痕はんこんのこさなければすまないきずを受けたなら、それこそ取返しのつかない不幸だと思っていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
禪師ぜんじられたるくび我手わがて張子はりこめんごとさゝげて、チヨンと、わけもなしにうなじのよきところせて、大手おほでひろげ、ぐる數十すうじふぞくうてすこやかなることわしごとし。ついきずえてせずとふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「頸筋のきずは、後ろから刺したんだ。いゝか、ぼんのくぼは大變な急所だが、のどや胸と違つてあまり血が出ねえ、——ところで、少しばかりの血が、目隱の手拭の下へ附いて居るのは何う言ふわけだ」
はしに殘れる緑にも蟲づき病めるきずあと
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
きずつきし野獣の如き風鳴かざなりの
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
「曹操何ものぞ。きずえるのを待ってはいられない。すぐわしの戦袍せんぽうかぶとをこれへ持て、陣触れをせいっ」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「頸筋のきずは、後ろから刺したんだ。いいか、ぼんのくぼは大変な急所だが、喉咽のどや胸と違ってあまり血が出ねえ、——ところで、少しばかりの血が、目隠しの手拭の下へ付いているのはどういうわけだ」
衣服をかたぬぎながら、関羽はきずを病んでいる片臂かたひじを医師の手にまかせ、なお右手では碁盤に石を打っていた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このとき周瑜は、きずもあらかた平癒して、膿水のうすいも止まり、歩行には不自由ない程度になっていたので、彼は勇躍身をよろって、みずから戦陣に臨むべく決心した。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
龐徳ほうとくに射られた左のひじきずである。あのやじりに、死んだ龐徳の一念がこもっているかのようだった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
華陀はきずを切開しにかかった。下に置いた銀盆に血は満ち溢れ、華陀の両手もその刀もすべて血漿けっしょうにまみれた。その上、ひじの骨を鋭利な刃ものでガリガリ削るのであった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
来てははずかしめること七回に及んだ。程普はひとまず兵を収めて、呉の国元へ帰り、周瑜のきずが完全に癒ってから出直そうという意見を出したが、諸将の衆評はまだそれに一致を見なかった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
果たして、一月の中に、周泰のきずは、拭ったように全治した。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
重傷の凌統は、全身のきずをつつんで、なお君前にいたが
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
華陀かだを呼べ。華陀がくればこんなきずはなおる」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)