献立こんだて)” の例文
旧字:獻立
正式の寸法の割合として、たとえば坐像二尺の日蓮にちれん上人、一丈の仁王におうと木寄せをして仏師へ渡します。結局つまり、仏師が彫るまでの献立こんだてをする役です。
明治の元勲げんくん井上侯のように、あるいはアイゼンハウワーのように、来賓らいひんに供する料理は必ず自分でつくる、あるいは監督もする、献立こんだてはもちろん。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
アハセもしくはオカズという副食物も、大体に手数のかからぬ物をきめて、いつも同じような献立こんだてをくりかえしていた。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
土曜日の晩には、炊事部すいじぶはみんなの弁当の献立こんだてをするのに忙しかった。次郎が道順の相談のために、各室に引っぱりこまれたことはいうまでもない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
西洋料理の献立こんだてにも必ずパンが入要ですし、旅の弁当にもサンドウィッチをたずさえる有様ありさまですから誰でもパンの事をよく知っていなければなりません。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
献立こんだてはひといろで、海老色のシャツにネクタイをつけ、栗色の髪と髭とを特別念入りに鏝でまき上げているその給仕は、給仕する小指に指環をはめている。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
おつかれもおわそうが、信雄が心からな献立こんだてです。徳川どのへよする敬意と信頼を盛ったものと、召し上がられなくば、眺めてだけでも、おみください。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三度三度献立こんだてを持ってあつらえを聞きにくる婆さんに、二品ふたしな三品みしな口に合いそうなものを注文はしても、ぜんの上にそろった皿を眺めると共に、どこからともなく反感が起って
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
料理店もある。そうして日本内地にある時とおなじような料理を食わせると、N君はまずその献立こんだてをならべておいて、それから本文の一種奇怪な物語に取りかかった。
マレー俳優の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ひどく料理にる家で、ことに竜土会の時は凝り過ぎるという評があった。紅葉山人のなくなった後だった。「紅葉山人白骨」というのが献立こんだてにあるので、みんなが驚いた。
芝、麻布 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
清助は奥の部屋と囲炉裏いろりばたの間をったり来たりして、二人の下女を相手に働いているお民のそばへ来てからも、風呂ふろの用意から夕飯として出す客膳きゃくぜん献立こんだてまで相談する。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
食事の献立こんだて塩梅あんばいなどをうまくして病人を喜ばせるなどはその中にも必要なる一カ条である。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ふと見ると、毎日の献立こんだてを予告する黒板に、大きな字で、こんなことが書きつけてある。
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
茶室、茶庭、茶器、掛物、懐石の料理献立こんだて、読むにしたがって私にも興が湧いて来た。茶会というものは、ただ神妙にお茶を一服御馳走になるだけのものかと思っていたら、そうではない。
不審庵 (新字新仮名) / 太宰治(著)
これは長兄が生れたとき、いはひもらつた品々などの記入から始まり、法事の時の献立こんだて、病気見舞の品々、婚礼のときの献立など、こまごまとしるしてあるので、僕は珍しいと思つて貰ひ受けたのであつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
三十六品の献立こんだてに大原は図らざる援兵を得て昼食ちゅうじきを済ませし後小山の妻君と下女とを伴い急ぎ我家へ帰り行きぬ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
大理石の卓子テーブルの上に肱をついて、献立こんだてを書いた茶色の紙を挾んである金具を独楽こまのように廻していた忠一が
明るい海浜 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
内部の献立こんだて悉皆すっかり出来上がり、会名が附いたのでとどけを出し、許可になったので、その年の秋すなわち明治十九年十一月むこう両国の貸席井生村楼いぶむらろうで発会することになった。
「まず献立こんだてを見ながらいろいろ料理についての御話しがありました」「あつらえない前にですか」「ええ」「それから」「それから首をひねってボイの方を御覧になって、 ...
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
最初から最後まで、献立こんだてから煮て食べるところまで、ことごとく自分で工夫し、加減をしてやるのであるから、なにもかもが生きているというわけである。材料は生きている。
鍋料理の話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
料理のことは勿論この話に直接の関係はないのだが、英領植民地のシンガポールという土地はまずこんなところであるということを説明するために、ちょいと献立こんだて書きをならべただけのことだ。
マレー俳優の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そればかりではない、同じ献立こんだてを何人前も調ととのえておいて、多数の朋友にそれを想像で食わして喜こんだ。今考えると普通のものの嬉しがるような食物くいものはちっともなかった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先ず二十銭の方にしますと十人前で弐円ですね。それで一通りの献立こんだてを作ろうとするには第一がスープですけれども肉類のスープは直段ねだんが高くなりますから手軽な赤茄子あかなすスープに致しましょう。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
座敷の装飾や料理の献立こんだてなども大そう整っていまして、来客は十人あまり、みな善く酒を飲みました。楽人らは一生懸命に楽を奏していると、もう酒には飽きたから食うことにすると言い出しました。
自然の献立こんだてのうちに、光線の圧力という事実は印刷されていないようじゃないか。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
冷肉料理はお弁当に限らず暑い時分には家庭の食事に用いてもお客への御馳走にしてもようございます。先ずその献立こんだてを致してみましょうか。第一がコールポークと申して豚の冷肉に致しましょう。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そこへ行くと日本の献立こんだては、吸物すいものでも、口取でも、刺身さしみでも物奇麗ものぎれいに出来る。会席膳かいせきぜんを前へ置いて、一箸ひとはしも着けずに、眺めたまま帰っても、目の保養から云えば、御茶屋へ上がった甲斐かいは充分ある。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)