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ものずき
ふりがな文庫
“
物好
(
ものずき
)” の例文
それはこの年月
幾度
(
いくたび
)
と知れず
見馴
(
みな
)
れた上にも見馴れた街の有様ながら、しかしここに住馴れた江戸ッ児の馬鹿々々しいほど
物好
(
ものずき
)
な心には
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼は
物好
(
ものずき
)
にも
自
(
みずか
)
ら進んでこの
後
(
うし
)
ろ
暗
(
ぐら
)
い奇人に握手を求めた結果として、もう少しでとんだ迷惑を
蒙
(
こう
)
むるところであった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
其れが
飄然
(
ふはり
)
として
如何
(
いか
)
にも
容易
(
たやす
)
い。どの飛行機にも
飛行家
(
ピロツト
)
以外に
物好
(
ものずき
)
な
男女
(
なんによ
)
の見物が乗つて居る。和田垣博士も僕も自然と気が
昂
(
あが
)
つて乗つて見たく成つた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
僕の親父はあいつの子供の時分、香具師があんまり残酷に扱うのを見兼ねて、
物好
(
ものずき
)
半分に買取ったのですが、一年二年とたつに従って、後悔しはじめたのです。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「ええ、
物好
(
ものずき
)
に試すって、呼んだ方もありましたが、地をお謡いなさる方が、何じゃやら、ちっとも、ものにならぬと言って、すぐにお
留
(
や
)
めなさいましたの。」
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
九谷という村は、加賀の
山中
(
やまなか
)
という温泉から、六、七里ばかりも渓流に沿って上った所にある山間の
僻地
(
へきち
)
で、今でもよほどの
物好
(
ものずき
)
でないと行けぬ位の山奥である。
九谷焼
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
こういう男は随分世間にもあるもので、
雅
(
が
)
のようで俗で、俗のようで
物好
(
ものずき
)
でもあって、愚のようで
怜悧
(
りこう
)
で、怜悧のようで
畢竟
(
ひっきょう
)
は愚のようでもある。不才の才子である。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ただ世間の食道楽者流
酢豆腐
(
すどうふ
)
を
嗜
(
たしな
)
み塩辛を
嘗
(
な
)
むるの
物好
(
ものずき
)
あらばまた余が小説の新味を喜ぶものあらん。食物の滋養分は
能
(
よ
)
くこれを消化して
而
(
しかし
)
て吸収せざれば人体の用を成さず。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
伝統的義侠と
物好
(
ものずき
)
な江戸人の特色を多く含んでいた事や、気負い
肌
(
はだ
)
の養母に育てられた事や、芝居と小説の架空人物に自らをよそえた、偽りの生活を享楽している中に住んで、不安もなく
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
先刻より五兵衞へ
尋問中
(
たづねちう
)
腹
(
はら
)
の中にて
種々
(
いろ/\
)
考へ置し故文右衞門方より五ヶ月限りに
受出
(
うけいだ
)
すべき
對談
(
たいだん
)
ゆゑ其意に任せ約定仕つり候事に御座候
然
(
さ
)
も是なく候へば
御定法通
(
ごぢやうはふどほ
)
り八ヶ月の
期限
(
きげん
)
に御座候と云ければ越前守殿
微笑
(
ほゝゑ
)
まれ然らば文右衞門は餘程
物好
(
ものずき
)
と見える
質
(
しち
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
という委細の
談
(
はなし
)
を聞いて、何となく気が進んだので、考えて見る段になれば随分
頓興
(
とんきょう
)
で
物好
(
ものずき
)
なことだが、わざわざ教えられたその寺を
心当
(
こころあて
)
に山の中へ入り込んだのである。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「一体
物好
(
ものずき
)
でこんな所へ入って来たお前さんは、怖いものが見たいのだろう。少々ばかりね。」
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかしそのたんびに「
物好
(
ものずき
)
」という言葉がどうしてもいっしょに出て来た。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
青い山から靄の麓へ
架
(
か
)
け渡したようにも見え、低い
堤防
(
どて
)
の、
茅屋
(
かやや
)
から茅屋の軒へ、
階子
(
はしご
)
を
横
(
よこた
)
えたようにも見え、とある大家の、
物好
(
ものずき
)
に、長く渡した廻廊かとも
視
(
なが
)
められる。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
兄さんと私はさすがにそこへ
浴衣
(
ゆかた
)
を投げ
棄
(
す
)
てて
這入
(
はい
)
る勇気はありませんでした。しかし湯の中にいる黒い人間を、岩の上に立って
物好
(
ものずき
)
らしくいつまでも眺めていました。兄さんは
嬉
(
うれ
)
しそうでした。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし鷺の姿は、近ごろ狂言の
流
(
ながれ
)
に影は映らぬと聞いている。古い隠居か。むかしものの
物好
(
ものずき
)
で、
稽古
(
けいこ
)
を積んだ巧者が居て、その人たち、言わば素人の催しであろうも知れない。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
物
常用漢字
小3
部首:⽜
8画
好
常用漢字
小4
部首:⼥
6画
“物好”で始まる語句
物好奇