片翼かたつばさ)” の例文
三角形さんかくなりの砂地が向うに、蘆の葉が一靡ひとなびき、鶴の片翼かたつばさ見るがごとく、小松もに似て十本ともとほど。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鳶のが、少しづゝ、石垣のあいだへ入る——いささかは引いて抜くが、少しづゝ、段々に、片翼かたつばさが隠れたと思ふと、するりとまれて、片翼だけ、ばさ/\ばさ、……あおつて煽つて
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
人間の気を奪ふため、ことさらに引込ひきこまれ/\、やがてたちまその最後の片翼かたつばさも、城の石垣につツと消えると、いままで呼吸いきを詰めた、群集ぐんじゅが、おう一斉いっときに、わツと鳴つて声を揚げた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それでも見得があるから、お前、松明たいまつをつけて行って見ろ、天狗の片翼かたつばさを切って落とした、血みどろになったとびの羽のようなものが落ちてたら、それだと思えなんて、血迷ってまさ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
波を渡るか、宙をくか、白き鵞鳥がちょう片翼かたつばさ、朝風に傾く帆かげや、白衣びゃくえ水紅色ときいろ水浅葱みずあさぎ、ちらちらと波に漏れて、夫人と廉平がたたずめる、岩山の根のいわに近く、忘るるばかりに漕ぐ蒼空あおぞら
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あたりは蝙蝠傘かうもりがさかついで、やごゑけて、卍巴まんじともえを、薙立なぎた薙立なぎた驅出かけだした。三里さんり山道やまみち谷間たにまたゞ破家やぶれや屋根やねのみ、わし片翼かたつばさ折伏をれふしたさまなのをたばかり、ひとらしいもののかげもなかつたのである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つゝとわし片翼かたつばさながひらいたやうに、だんをかけてれつとゝのふ。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)