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焦慮
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しょうりょ
ふりがな文庫
“
焦慮
(
しょうりょ
)” の例文
断えず込み上げて来る好色心が、それからそれへと
渦
(
うず
)
を巻いて、まだ高々と照り渡っている日の色に、
焦慮
(
しょうりょ
)
をさえ感じ始めたのであった。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
これが真佐子の父親に知れ、よしんば学費が途絶えるにしても真佐子を試すことは今は金魚の研究より復一には
焦慮
(
しょうりょ
)
すべき問題であった。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
もっとも世俗的な
浅薄
(
せんぱく
)
な考えにのみ
焦慮
(
しょうりょ
)
致し、一歩立ちいって根本的に考えるという事ほとんど
無之
(
これなく
)
、はずかしき次第に候う。
廃める
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
が、今は王氏の
焦慮
(
しょうりょ
)
も待たず、自然とこの図が我々の前へ、
蜃楼
(
しんろう
)
のように現れたのです。これこそ実際天縁が、熟したと言う
外
(
ほか
)
はありません。
秋山図
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この場の将軍の様子を、遠くから
窺
(
うかが
)
っていたのは、高級副官の湯河原中佐だった。彼は何事かについて、しきりに
焦慮
(
しょうりょ
)
している
様
(
よう
)
でもあった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
そうして宙を運ばれながら、生きた心地もない
焦慮
(
しょうりょ
)
の中で、川手氏は不思議にはっきりと、ある異様な事柄を気附いていた。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彷徨
(
さまよい
)
あるき、なにかの幸福を
手掴
(
てづか
)
みにしたい
焦慮
(
しょうりょ
)
に、
身悶
(
みもだ
)
えしながら、
遂々
(
とうとう
)
帰国の日まで過してしまいました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
まさに、あれやこれの、
最中
(
さなか
)
なのである。ご
焦慮
(
しょうりょ
)
もいちばいだった。ついに、
右大弁
(
うだいべん
)
ノ
宰相
(
さいしょう
)
清忠を召されて
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼の頭の中には疑心と憂鬱と
焦慮
(
しょうりょ
)
と情熱が、まるでコクテイル・シ※ークのように
攪
(
か
)
き廻された。彼は何をしでかすか解らない自分に、監視の眼を見張りだした。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
中将のほうでは少しも
焦慮
(
しょうりょ
)
するふうを見せず落ち着いているのであったからしかたがないのである。
源氏物語:26 常夏
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
夫人が生れつき持つてゐた平安な無関心さはしかし、至の
焦慮
(
しょうりょ
)
を消極的に鞭うつのであつた。
垂水
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
左膳の
焦慮
(
しょうりょ
)
は眼に見えてきた。
娘
(
むすめ
)
一人に婿八人、各方面から、この壺をねらう者の多いなかに、片腕の孤剣を持って、よくここまでまもり通してきたものを、今むざむざ……。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
日夜
焦慮
(
しょうりょ
)
していた殺人鬼その人であったことは、なんら疑念の余地がないのである。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
燕王兵を挙ぐるに及び、日に召されて謀議に参し、
詔檄
(
しょうげき
)
皆孝孺の手に
出
(
い
)
づ。三年より四年に至り、孝孺
甚
(
はなは
)
だ
煎心
(
せんしん
)
焦慮
(
しょうりょ
)
すと雖も、身武臣にあらず、皇師
数々
(
しばしば
)
屈して、燕兵
遂
(
つい
)
に城下に
到
(
いた
)
る。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼等の体的欲望は、
毫
(
ごう
)
も消えた訳ではないが、ただその欲望を満足せしむべき機関がない。そこが彼等の大いに
煩悶
(
はんもん
)
焦慮
(
しょうりょ
)
する点である。
凡
(
およ
)
そ世に充たされざる渇望ほどつらいものはない。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
分
(
わか
)
らなければ分らないだけに、何ともえたいの知れぬ気味悪さが、黒雲のように心中に湧き起って来て、不安と
焦慮
(
しょうりょ
)
に、居ても立ってもいられぬ心持であった。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
まことに念入りな
鄭重
(
ていちょう
)
慇懃
(
いんぎん
)
を
極
(
きわ
)
めた脅迫状であった。しかしいくら鄭重慇懃でも、脅迫状は嬉しくない。受取人の苅谷勘一郎は
焦慮
(
しょうりょ
)
熟考
(
じゅっこう
)
の末、一つの成案を得た。
奇賊は支払う:烏啼天駆シリーズ・1
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
しかし正成は、さして
焦慮
(
しょうりょ
)
を抱いたふうでもない。——参内の二十一日の朝は、早くに
物具
(
もののぐ
)
を着け、さて、門を出るさいに、初めて
甥
(
おい
)
の楠木弥四郎にたずねていた。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私はこのあひだの、男の子を抱へて貧しい寡婦になつた母の心労や
焦慮
(
しょうりょ
)
を、いま君に告げる材料を持たないことを残念に思ふ。私は反省癖のつよい子供として、当然内に籠る子供になつたからである。
母たち
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
彼は燃えるような敵意をこめて言い放ったが、次の瞬間には、又しても不安と
焦慮
(
しょうりょ
)
にくずおれていた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
となす印象を、
時人
(
じじん
)
に深くしたことの方が、六波羅には、さしあたっての
焦慮
(
しょうりょ
)
だった。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私達は非常な
焦慮
(
しょうりょ
)
を感じながら、
已
(
すで
)
に
度々
(
たびたび
)
交わしていた唇をさえ交わすことなく、無論その外の何事をもしないで、ベッドの上に並んで腰をかけて、気拙さをごまかす為に
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と、やがてはまた、一抹の不安と、時たつほど、重たい
焦慮
(
しょうりょ
)
になっていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼の十数日にわたる
惨憺
(
さんたん
)
たる
焦慮
(
しょうりょ
)
などには少しも気づかないで、あの快活な笑い声を立てながら、暖かい家庭で無邪気に談笑しているS子の姿がまざまざと浮んで来るのでした。
算盤が恋を語る話
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そして次の瞬間には、彼の眼に恐ろしい
焦慮
(
しょうりょ
)
の色が浮かんだ。こうしてはいられない。文代さんが危ないのだ。しかし、この厳重な監禁をどうして脱出することができるだろう?
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
明智は名状できない
焦慮
(
しょうりょ
)
の色を浮かべて、不安に耐えぬもののようである。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
“焦慮”の意味
《名詞》
焦慮(しょうりょ)
いらだつ(いらだたせる)こと。焦り。
(出典:Wiktionary)
焦
常用漢字
中学
部首:⽕
12画
慮
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
“焦”で始まる語句
焦
焦躁
焦燥
焦心
焦立
焦々
焦点
焦茶
焦眉
焦土