浅慮あさはか)” の例文
旧字:淺慮
わらう者は心なき町人ずれの事、まことの識者や、武門の何であるかを知る者は、よも浅慮あさはかに御当家を、卑怯の、不孝のとは、申しますまい
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牢屋へ入れられたのです。浅慮あさはかな奴であまりやりすぎたので到頭神罰が下ったのですね。……八ヵ月して裁判になりました。
女房ども (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
受難と思って、決して罪科とも浅慮あさはかさとも思わず、何ごとも神のみ心にお任せして、あんたをひたすら崇め敬うつもりだ。
源次郎お國は私のうちかくまってあるから手引きをして、私が討たせると云ったのは女の浅慮あさはか、お前と道々来ながらも、お前に手引きをして両人を討たしては
けれども、うちへ帰って十日半月と落ち着いているうちにわたくしの気もだんだんに落ち着いて来て、あんな男にだまされたのは自分の浅慮あさはかから起ったことで、今更なんと思っても仕様がない。
水鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
袁術は浅慮あさはかにも、一切の人馬をとりまとめ、ただ水害に飢えてうごけない住民だけを残して、淮南から河北へ移ろうと決めた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしどもが浅慮あさはかな考えから思って見ますると、早いたとえが、我々どもでも何か考えごとをして居りますときは、側で他人様ひとさまから話を仕掛けられましても精神がほかせて居りますので
肩で、息こそあえいでいるけれど、決して、そんな浅慮あさはかなことを——と笑ってみせるように、抱き支えた人々へ、安心を乞うた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
申し訳ございません。自分の馬鹿や浅慮あさはかがよく分りました。どうか手前を、見せしめのため、お縄にかけて、一刻もはやく、お国のため、工事を
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「つくづく自分の浅慮あさはかさが分ってきたよ、こうしてお前にみじめな泣き顔を見られるのさえ、わたしは死ぬよりなお辛い」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あたしの、考えちがいでした。浅慮あさはかなのが分りましたから、父に話したら、親の口からはもういえぬ。お詫びするなら、自分でいえといわれたので」
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうえ人の言をすぐ信じて、真夜中もかまわず直ぐ訪れようなんて……どうもそういう浅慮あさはかでは案じられてならん
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど瑤泉院はやがて、その「金銭出入帳」を一枚二枚と見てゆくうちに、自分の浅慮あさはかな考えを、厳粛に正された。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(おれにはまだ、縁をたのむ気持がせない。自力だ、一人だと、常にいましめながら、ふと人に依りかかる。……馬鹿だ、浅慮あさはかだ、おれはまだ成っていない)
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「すわ、またも不覚。孔明はまだ死んでいない。——浅慮あさはかにもふたたび彼のはかりごとにかかった。それっ、還れ還れっ」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あわれ浅慮あさはかにも、やがて、われからいどみかかッて来た彼らは、たちまち逆に、九紋龍の戒刀かいとうと、智深の錫杖の下に、お粗末な命の落し方を遂げてしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かさねがさね、こんな所へわれから踏みこんだ魯智深の不覚は不覚というよりは、浅慮あさはかだったというしかない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小人しょうじん……小人の浅慮あさはかさ。……仰せのように、いつしか、思いあがっておりました。……その紋太夫の心に乗じて、おそらく魔などがしたものにござりましょう。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、いや、滅相めっそうもない。いぶかったわしこそ浅慮あさはかでおざった。さても今どきにめずらしいご忠節」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
越前の援けは遠し、叡山とは湖の隔てがあり、そして今浜にはわが織田家の丹羽にわ五郎左衛門あり、ここには木下藤吉郎がいるものを。……はははは、浅慮あさはかな人々ではある
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「討ちました。——子のかたきにはあらで、わが心の浅慮あさはかな怨念を刺しとめてござる。——願わくば長尾新六のなきがらには、法衣を与えてご追放下されたくぞんじまする」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「君のいうことは、策でもなんでもない。ただ、勇気を口にあらわしただけのものだ。玄徳、呂布などという敵へ、そういう浅慮あさはかな観察で当るのは危険至極というものだ」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お口が過ぎよう。貴公こそ武将として、お気の毒なほど浅慮あさはか至極だ。洲股の敵城は、こんどはわざと敵の思うまま工事をすすませているのでござる。おさとりがつかぬか」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まったく、奸夫奸婦の運のつき、眠り獅子のひげへ、浅慮あさはかにも手をやったにひとしかったのである。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ、何たる浅慮あさはかな——」と、孔明は痛嘆して、彼らの小児病的な現実観をあわれんだ。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、さすがにその計りがたい鋩子きっさきへ、吾から命を落しに来る浅慮あさはかな者もなく、やッ、おッ、のわめきばかりで、しばらくは七本の刀影がギラギラと相映じているのみだった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅慮あさはかに彼のわなへ士卒を投じるの愚をなすな。幸いなるかな、ときは今、大夏のこの炎天。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
苟安に買収された徒が浅慮あさはかにも私利私慾に乗ぜられて、思うつぼへ落ちたものであった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅慮あさはか浅慮。これしきの苦肉の計に、いかでこの曹操がいつわられようか。明白なる謀略だ。——それっ、部将輩ぶしょうばら、その船虫みたいなむさい老爺おやじを、営外へ曳きだして斬ってしまえ」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で彼は、老父の顔すら見ず、宋清にだけ後日を約して、すぐ元の道へ走りもどった。走りながらもわが愚を責めた。なんたる浅慮あさはかな我意を押し通して無駄な日数をついやしたことか、と。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何の、過誤あやまちといえば、この治郎左衛門の浅慮あさはかにもあったことだ。尊公が腹を切るには及ばん。——尊公の義心にでて、治郎左衛門の首は、尊公へ進上する。いざ、後ともいわず、拙者の首を
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(女というものは、どうしてこんなに、情痴じょうちなのであろう)玉日は、自分の心をふかく掘り下げてみて、そこにわれながら浅慮あさはかなさまざまな邪推やらひがみが根を張っているのに気がついた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
名さえ変えたら、この婆にも、捜し当てられまいと思うてかよ! 浅慮あさはかな! 天道様は、この通り、おぬしが逃げ廻る先とても照らしてござるぞよ。……さ、見事、婆の首取るか、おぬしが生命いのち
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敗れたりといえ、きのうまで、領主と仰いでいた地頭をからめ捕り、侵攻の敵軍へ渡すのみか、百姓の業を怠り、利のためこれへ出て、功を争い述べるなど、野人の浅慮あさはかといえ、心情にくむべしじゃ。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあ何というにべもないお言葉。殿方の薄情けを真にうける女子は浅慮あさはかかも知れませぬが、妾はどうあっても、そんな近い日にお帰し申すのは嫌じゃ、覚明様、その心意つもりでおいでなされませの……」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男の未来を犠牲にえにさせて、この儘、戻ろうなどと考えておいでたのか。さりとは、浅慮あさはかな。……実を云えば、恥しいが、人妻のあなたに、この半蔵は日頃からやる瀬ない思いをこがしていたのでござる。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ええ、浅慮あさはかなことを。はやく下流しもへまわれ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さてさて、汝にも似げない浅慮あさはかな。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅慮あさはかなやつじゃ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅慮あさはか浅慮」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)