気遣きづかひ)” の例文
旧字:氣遣
まあ、ね、病院も上等へ入れて手宛てあては十分にしてあるのだから、決して気遣きづかひは無いやうなものだけれど、何しろ大怪我だからね。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
なにおこつてらつしやるんぢやアなからうかてつて、ひど彼婦あのこが心配してえるんですよ、ナニおまへ失策しくじ気遣きづかひはないよ、アノときおく見通みとほしにてエたのは
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかして、かの女は五六年じつとしてゐる気遣きづかひはない。従つて、君があの女と結婚する事は風馬牛だ
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
えツ、何だと——么麼どんな聟君をお世話するかと。……はツはツはツ、余程心配になつて来たナ。大丈夫安心しろ、君達のやうなノラクラ者を御世話する気遣きづかひは無いからナ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
かはばかりの死骸しがいもりなかくらところ、おまけに意地いぢきたな下司げす動物どうぶつほねまでしやぶらうと何百なんびやくといふすうでのしかゝつてには、をぶちまけてもわか気遣きづかひはあるまい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
全くね、間はああ云ふ不断の大人おとなしい人だから、つまらない喧嘩けんかなぞを為る気遣きづかひはなし、何でもそれに違は無いのさ。それだから猶更なほさら気の毒で、何ともひやうが無い
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
切符がちがふだらうと聞けば、無論違ふと云ふ。然し一人ひとりほうつて置くと、決して気遣きづかひがないから、君がつて引張出ひつぱりだすのだと理由わけを説明してかせた。三四郎は承知した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
同じ事でもめうなもので、料理茶屋れうりぢややから大酔たいすゐいた咬楊子くはへやうじなにかでヒヨロ/\すぐ腕車くるまに乗るなどは誠に工合ぐあひよろしいが、汁粉屋しるこやみせからはなんとなく出にくいもの、汁粉屋しるこやでは気遣きづかひはない
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
かねはらなかれちまつてモウたれにも取られる気遣きづかひがないから安心して死んだのだがうも強慾がうよくやつもあつたもんだな、これ所謂いはゆる有財餓鬼うざいがきてえんだらう、なにしろ此儘このまゝはうむつてしまふのはをしいや
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)