梵天ぼんてん)” の例文
やがて、勢揃いした源平の両陣は、声を合わせてときをあげた。その声は西海の波をはるかに越え、遠く梵天ぼんてんまでも聞えるほどであった。
上に梵天ぼんてん帝釈天たいしゃくてん、下は四大天王も照覧あるべしと、物々しい誓いを立てゝみても、そのような一片の紙きれを以て収まる筈はないのであった。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
脇立わきだちの梵天ぼんてん帝釈たいしゃくの小さい塑像(日光にっこう月光がっこうともいわれる)が傑作であることには、恐らく誰も反対しまい。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「そもそも、つつしみ、うやまって申したてまつるは、かみ梵天ぼんてん帝釈たいしゃく四天王してんのう、下界に至れば閻魔法王えんまほうおう……」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
部屋の片隅に等身ほどもある、梵天ぼんてんめいた胴の立像があったが、その眼へ篏められてある二つの宝玉が、焔のような深紅しんくに輝いていた。紅玉などであろうかもしれない。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それはほかでもない、あの堂に安置してある等身大の梵天ぼんてんの立像に手を入れる時、台座をはづしてみると、そのあはせの所に、男子の局部が二ついてあつたといふ事だ。
突如、梵天ぼんてんの大光明が、七彩赫灼かくしやく耀かがやきを以て、世界開発かいほつの曙の如く、人天にんてん三界を照破した。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
但中尊の相好は、金戒光明寺のよりも、粗朴であり、而も線の柔軟はあるが、脇士わきじ梵天ぼんてん帝釈たいしゃく・四天王等の配置が浄土曼陀羅まんだら風といえば謂えるが、後代風の感じをたたえている。
山越しの阿弥陀像の画因 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
四隅に護持する増長ぞうじょう持国じこく広目こうもく多聞たもんの一丈の四天王をはじめ、この間に佇立する梵天ぼんてん帝釈天たいしゃくてん密迹王みっしゃくおう金剛王こんごうおう不動明王ふどうみょうおう、地蔵尊、弁才天、吉祥天きっしょうてん、及び北面する秘仏、執金剛神しゅうこんごうじん
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
地蔵、観音、勢至せいし文殊もんじゅ普賢ふげん虚空蔵こくぞうなどある。それから天部てんぶという。これは梵天ぼんてん帝釈たいしゃく、弁天、吉祥天きっしょうてん等。次は怒り物といって忿怒の形相をした五大尊、四天、十二神将じんしょうの如き仏体をいう。
師として、指導のよろしきを得ねば、梵天ぼんてんの悪魔にすかも知れず、そのたまたる質のみがきによって、このすさび果てた法界の暗流あんる濁濤だくとうをすくう名玉となるかも知れない。その任を重く思うのだ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
梵天ぼんてん帝釈たいしゃくの許しを得、雷となって自分に辛かった人々に怨みを報じようとしているのに、尊閣のそく浄蔵が法力を以てさまたげをなし、自分を降伏させようとするのは心外である
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
……お企てへ一味し忠誠つかまつる。もし偽りあるにおいては、梵天ぼんてん帝釈たいしゃく四大天王、日本六十余州の神祇より、きっと冥罰めいばつを受くべきものなりと、誓ったあげく姓名したため、しかと血判いたしたのだ
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その怨みを報ぜんために雷神となって都の空をあまがけり、鳳闕ほうけつに近づき奉ろうと思っている、此の事は既に梵天ぼんてん、四王、閻魔えんま帝釈たいしゃく、五道冥官みょうかん、司令、司録等の許しを得ているので
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)