柳眉りゅうび)” の例文
はね起きると、またすぐに、胸の辺りをドンと突かれたが、お綱は、うしろへよろけながら、きッと、柳眉りゅうびさかだてて
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文三は恐ろしい顔色がんしょくをしてお勢の柳眉りゅうびひそめた嬌面かお疾視付にらみつけたが、恋は曲物くせもの、こう疾視付けた時でもお「美は美だ」と思わない訳にはいかなかッた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ちょうど昔しの愚かな大名の美しい思いものが、柳眉りゅうびを逆立て、わがままを言い募る時の険しい美しさで。庸三はこれには手向かうことができなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
しかも、両人ともに柳眉りゅうびをさかだてんばかりにしながらかん高い声をあげると、異口同音にわめきたてました。
あるいは若菜売る児に対して、柳眉りゅうびといひたる者にも候ふべけれど、さやうなシヤレのない方がかへつて趣深く聞え申候。尋常に柳が緑になると申したく候。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
柳眉りゅうびをキリキリと釣り上げて、『騒々しいねえ』と嬌瞋きょうしんをいただくわけのものでもなし、人間は至極柔和に出来ていらっしゃるに、無類のお話好きとおいでなさる。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
喬之助妻園絵と交換にそれを承諾しょうだくしていたが、これを立ち聞きしたのが、造酒の妻とも妾ともつかない芸妓上げいしゃあがりの市松お六で、思わず柳眉りゅうび逆立さかだてているところへ
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
柳眉りゅうびは引き釣り、紅唇はゆがんで、生え際の毛が、ざわざわと逆立つようにさえおもわれるのだった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
いよいよ柳眉りゅうびを逆立てた夫人は夫の留守にそっと彼の生家へ立ち寄って、母なる人に懇請し、かれのいわゆる「あのおいしいプディング」なるものを拵えてもらって
字で書いた漫画 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
「浮気」彼女は柳眉りゅうびを逆立てていう。「笑談じょうだんじゃないわ。あんなところに、お勤めしていても、あたしだけは真面目で通したのよ。だから、日に四百円ぐらいしか、平均の収入なかったのよ」
野狐 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ひどいこと!」と柳眉りゅうび逆立さかだち、こころげきして団扇うちわに及ばず、たもとさきで、向うへ払ふと、怪しい虫の消えたあとを、姉は袖口そでくちんでいてりながら、同じ針箱の引出から、二つ折、笹色ささいろべにいた
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
天女は飛びのき、凜として、柳眉りゅうびを逆立てて、直立した。
紫大納言 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
柳眉りゅうびを立て、くれないまなじりをあげて、夫人はその細腰に帯している小剣のつかに手をかけた。徐盛、丁奉はふるえ上がって
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身悶みもだえして帯を解棄て、毛を掻挘かきむしまげこわせば、鼈甲べっこうくし黄金笄きんこうがい、畳に散りて乱るるすがた、蹴出す白脛しろはぎもすそからみ、横にたおれて、「ええ、悔しい!」柳眉りゅうびを逆立て、星眼血走り、我とわが手に喰附けば
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
菊路の美しい柳眉りゅうびは知らぬまに逆立ちしました。
アタピン女史、柳眉りゅうびを逆だてて
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「女はみんな、初めは柳眉りゅうびを逆だてて、そういうが、ひとたび、ほかの男を知ってごらんなさい。わが身のうちにひそんでいた泉の甘美に驚きますから」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女房柳眉りゅうびを逆立てて
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
柳眉りゅうび星眼火燄かえんの唇。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、いちばい、憎さも憎しと柳眉りゅうびを立てて、あやなす二刀の秘術をきわめ、魔術とも見えるそのはやい光の輪のうちに、発止はっしと、相手の槍を見事、巻き取ッてからめ落していた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柳眉りゅうび剣簪けんさん
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)