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暗黒
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やみ
ふりがな文庫
“
暗黒
(
やみ
)” の例文
暗黒
(
やみ
)
の中にじいっとしているような心持だった。ときどき人声がした。枕頭を歩き廻る跫音も聞こえた。眼も少しは見えるようだった。
釘抜藤吉捕物覚書:04 槍祭夏の夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
徒
(
いたずら
)
に
歳月
(
としつき
)
を送ッたを惜しい事に思ッているのか? 或は母の言葉の放ッた光りに我身を
縈
(
めぐ
)
る
暗黒
(
やみ
)
を破られ、始めて今が浮沈の
潮界
(
しおざかい
)
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
暗黒
(
やみ
)
の中に恐ろしい化物かなんぞのように
聳
(
そそ
)
り立った巨大な
煉瓦
(
れんが
)
造りの建物のつづいた、だだッ広い通りを、私はまた独りで歩き出した。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
ケリルはそう言いながらフェルガルに矢を投げつけた、矢がフェルガルの眼に当った、彼は
暗黒
(
やみ
)
と
静寂
(
しずけさ
)
を知って息が絶えた。
約束
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
俺の
母犬
(
おふくろ
)
は俺を生むと間もなく
暗黒
(
やみ
)
の晩に
道路
(
わうらい
)
で寝惚けた巡行巡査に足を踏まれたので、
喫驚
(
びつくり
)
してワンと吠えたら狂犬だと云つて殺されて了つたさうだ。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
▼ もっと見る
光明
(
ひかり
)
と
暗黒
(
やみ
)
の
道程
(
みちすじ
)
! それは
人生
(
ひとのよ
)
の道程でもある。光明と暗黒の道程を辿って行く左門の姿は、俯向いていて寂しそうで、人生の苦行者のように見えた。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
図書 針ばかり
片割月
(
かたわれづき
)
の影もささず、下に向えば真の
暗黒
(
やみ
)
。男が、足を踏みはずし、壇を転がり落ちまして、
不具
(
かたわ
)
になどなりましては、
生効
(
いきがい
)
もないと存じます。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
復た馬車は
暗黒
(
やみ
)
の中を衝いて進みましたが、それが夜道へ響けて
可恐
(
おそろ
)
しい音をさせました。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
あゝ
偉
(
い
)
なる
哉
(
かな
)
、
暗黒
(
やみ
)
の
宮殿
(
みやい
)
のこの「奢侈」。
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
戸外
(
こがい
)
には、丑満の
暗黒
(
やみ
)
につつまれた木立ちが、真っ黒に黙して、そのうえに、
曲玉
(
まがたま
)
のようにかかっているのは、生まれたばかりの若い新月。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
見えたものはただみどりのほの暗さで、その暗さは濃い色のかげとなり、そのかげはやがて
暗黒
(
やみ
)
となった。
精
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
其時小さな
鞠
(
まり
)
のような物が
衝
(
つ
)
と軒下を
飛退
(
とびの
)
いたようだったが、
軈
(
やが
)
て
雪洞
(
ぼんぼり
)
の
火先
(
ひさき
)
が立直って、一道の光がサッと
戸外
(
おもて
)
の
暗黒
(
やみ
)
を破り、雨水の処々に溜った
地面
(
じづら
)
を一筋細長く照出した所を見ると
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そのまま、ふわりとして、
飜然
(
ひらり
)
と
上
(
あが
)
った。物干の
暗黒
(
やみ
)
へ影も隠れる。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そこから暗剣殺は
未申
(
ひつじさる
)
の方角、背戸口の
暗黒
(
やみ
)
に勘次を忍ばせておいて、藤吉は彦を引具し、案内も乞わずにはいり込んだ。
釘抜藤吉捕物覚書:06 巷説蒲鉾供養
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そのためには、いつの代にも人の涙が流されるであろう、そして
凡
(
すべ
)
ての智慧と美と希望はこの国に芽生え、この国は
灯火
(
ともしび
)
となり、同時に
暗黒
(
やみ
)
の底の
暗黒
(
やみ
)
を知るであろう。
ウスナの家
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
気のせいかな、と
前方
(
まえ
)
の
暗黒
(
やみ
)
を見透しながら、早耳三次が二、三歩進んだ時、橋の下で、水音が一つ寒々と響き渡った。
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「わたしたちはただ二人ではありません、
暗黒
(
やみ
)
のなかにいるわたしたち二人は」
浅瀬に洗う女
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
穴は、ポッカリ地上に口をひらいて、
暗黒
(
やみ
)
をすいこんでいるばかり……のぞいてよばわっても、なんの答えあらばこそ。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
夜と
暗黒
(
やみ
)
のなかの、雲と霧のおぼろの影と女は立てり
浅瀬に洗う女
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
永劫
(
えいごう
)
の
暗黒
(
やみ
)
に
葬
(
ほうむ
)
り去られることになった——とこういう因果話のはしはしが、お露の亡霊からいつ果てるともなく、壁へ向って
呟
(
つぶや
)
かれるのであった。
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
われ
暗黒
(
やみ
)
と
静寂
(
しじま
)
の中に
彼女
(
かれ
)
の胸の鳴るをきく
精
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
わかっていて、なおかつ愛刀帰雁を唯一の護身者として、こうして
暗黒
(
やみ
)
に紛れて出て歩くには、守人にしても、そこによほど重大な用向きがなくてはかなわぬ。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
朝の七つ半刻、むらさき色の薄靄が
暗黒
(
やみ
)
を追い払おうとして、八百八町の寺々の鐘、鶏の声、早出の青物の荷車——大江戸は、また新しい一日の活動にはいろうとして。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
うば玉の
暗黒
(
やみ
)
よりも濃い心の暗闇に、すすり泣きの
音
(
ね
)
をこらえている女がひとり——それは、次の間のふすまのかげに、この
一伍一什
(
いちぶしじゅう
)
をもれ聞いたこの家の娘、お露でした。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
見て、こちとらあなるほどと感ずったんだ。奴め、
暗黒
(
やみ
)
ん中で、
漆
(
うるし
)
とは知らず千切ってかけ、折っては被せしたもんだから四
時
(
とき
)
の間にあのざまよ——梅雨に咲く黄色え花が口を
釘抜藤吉捕物覚書:02 梅雨に咲く花
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
暗黒
(
やみ
)
の水面に栄三郎を見失って長嘆息、いたずらに腕を
扼
(
やく
)
しながら三々五々散じてゆく。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
真っ直ぐ向いて、前の
暗黒
(
やみ
)
へ答えた。「はい、下郎でございます」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
まだ蒼茫たる
暗黒
(
やみ
)
のにおいが漂い残っていた。
釘抜藤吉捕物覚書:13 宙に浮く屍骸
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
“暗黒”の意味
《名詞・形容動詞》
暗黒(あんこく)
光がなく暗い状態。
現況や将来の見通しがつかず、心理的な不安を感じるさま。悪がはびこるなどして希望が持てないこと。失敗が続くなどして極度に自信を失った状態。
未知なこと。実態がよくわからないこと。
(出典:Wiktionary)
“暗黒(
闇
)”の解説
闇(やみ)とは、光の無い状態のこと日本国語大辞典/闇。暗闇(くらやみ)とも、暗黒とも。
(出典:Wikipedia)
暗
常用漢字
小3
部首:⽇
13画
黒
常用漢字
小2
部首:⿊
11画
“暗黒”で始まる語句
暗黒公使
暗黒裡
暗黒の海
暗黒局
暗黒街
暗黒星
暗黒蔵
暗黒々
暗黒神
暗黒色