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晝飯
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ひるめし
彼は
晝飯といふと
殊に
冷たい
粗剛い
飯を
厭うて
箸を
執るのが
辛いやうでもあつた。
其れで
彼は
時々村落の
店へ
行つて
豆腐の一
丁位に
腹を
塞げた。
父は火のやうに
怒つて、絹篩にかけた程に柔らかな
良い灰の
上層から、ザラ/\した
燒土の如き灰を取り棄てるのに、
朝飯が
晝飯になるのをも忘れてゐた。
翌日は
雨、
朝からしよぼ/\と
降つて
陰鬱極まる
天氣。
溪流の
水増してザア/\と
騷々しいこと
非常。
晝飯に
宿の
娘が
給仕に
來て、
僕の
顏を
見て
笑ふから、
僕も
笑はざるを
得ない。
留守には、
年寄つた
腰の
立たない
與吉の
爺々が
一人で
寢て
居るが、
老後の
病で
次第に
弱るのであるから、
急に
容體の
變るといふ
憂慮はないけれども、
與吉は
雇はれ
先で
晝飯をまかなはれては