整然ちゃん)” の例文
「予定は無論整然ちゃんと拵えて置いて戴かなければなりませんが、あなたはとても几帳面にお手紙を下さるような方じゃありませんからね」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
母「直ぐに帰れといっても、お前の来るのを待って居て、お前の坐る所へ整然ちゃんとお膳もおあにいさんのと仰しゃって心配をなすって」
目鼻立のはっきりとした、面長で、整然ちゃんとした高島田、品は知りませんが、よろけた竪縞たてじまの薄いお納戸の着物で、しょんぼり枕許へ立ったんです。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私が手を洗って二階へあがって見たら、お糸さんはう裾をおろしたり、たすきを外したりして、整然ちゃんとした常の姿なりになって、突当りの部屋の前で膝を突いて、何か用を聴いていた。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そしてその墓地の内には入水された皇帝と、その歴歴の臣下との名を刻みつけた幾箇かの石碑が立てられ、かつそれ等の人々の霊のために、仏教の法会がそこで整然ちゃんと行われていたのである。
耳無芳一の話 (新字新仮名) / 小泉八雲(著)
月謝束修の制度も整然ちゃんと立って居たのですが、漢学の方などはまだ古風なもので、塾規が無いのではありませんが至って漠然たるものでして、月謝やなんぞ一切の事は規則的法律的営業的で無く
学生時代 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
出が良いから品と云い応対と云い蓮葉はすっぱとこは少しもありません、落着いて居て、盃を一つ受けるにも整然ちゃんと正しいので
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
大したことはねえての、気さえたしかになれば整然ちゃんと治る。それからの、ここは大事ない処じゃ、ばばも猫も犬もらぬ、わし一人じゃから安心をさっしゃい。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
言いさま整然ちゃんとして坐り直る、怒気満面にあふれて男性の意気さかんに、また仰ぎ見ることが出来なかったのであろう、お雪は袖で顔をおおうて俯伏うつぶしになった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山「師匠此処へ下りな、いけねえことをしたな、何所どこかの葬式とむらいがあっておもり物を整然ちゃんと備えてあったに、おめえが喰って仕舞って咎められては申訳がえ」
そうだろうな、あの気象でも、きまりどころは整然ちゃんとしている。嫁入前の若い娘に、余り聞かせる事じゃないから。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しても虚言うそは大嫌いの旦那さまで、十二時に此処へ来い、御膳を食べさせると云うと整然ちゃんとお膳が出て居るので、御心配ない……此方こっちも感じてホロリと来ますねえ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何、そりゃおいら整然ちゃんうまくやってるから、大概内の奴あ、今時分は御寝ぎょしなっていらっしゃると思ってるんだ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
馬「へい、からかみ閉切たてきっていきれるからう枕元に立って立番をしているので、これから縁側へ整然ちゃんとお湯を持ってくんだ、何うです今夜はやくずつと極めましょう」
「でげすがな、絵が整然ちゃんとしておりますでな、挿絵は秀蘭斎貞秀で、こりゃ三世相かきの名人でげす。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いつでも折目正しくして居れば整然ちゃんとして二世も三世も夫婦になって居ります。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
博士 御秘蔵ながら、若様の御書物蔵へも、整然ちゃんと姫様がお備えつけでありますので。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
翌々日は整然ちゃんと結構な品物ばかり取揃とりそろえて風呂敷に包み、大伴蟠龍軒の名前を聞いてるから、本所割下水へくと、結構なあつらえ物をした上に始めての交際つきあいだと云うので、多分の目録をくれ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
思いなしか、気のせいか、段々やつれるようには見えるけんど、ついぞ膝も崩した事なし、整然ちゃんとして威勢がよくって、吾、はあ、ひとりでに天窓あたまが下るだ、はてここいらは、田舎も田舎だ。
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
男「なアに整然ちゃんとしたなりをして羽織を着てまいりました」
「何をいってるのよ。」と勇美子は机の前に、整然ちゃんと構えながら苦笑する。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
晃 泣く奴があるか、涙を拭いて、整然ちゃんとして、御挨拶ごあいさつしな。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
突羽子つくばねのようについて、ひるがえる処を袂の端で整然ちゃんと受けた。