挙手きょしゅ)” の例文
旧字:擧手
男は其処そこへ来るごとに直立して、硝子扉ごしの私達を見上げ莞爾かんじとしては挙手きょしゅの礼をしました。私達もだまって素直に礼を返してやりました。
病房にたわむ花 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「はッ」参謀は、粛然しゅくぜんとして、挙手きょしゅの礼をした。(参謀長も、飛行隊の出動命令に、不満を持っていられるんじゃ)と思った。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
晩方ばんがたちかく、小雨こさめるなかを、あには、たいへとかえりました。みんなが、門口かどぐちまで見送みおくりにると、ふりかえって挙手きょしゅれいのこしてりました。
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼の姿を見ると皆立ち上って挙手きょしゅの敬礼をした。黒い粉末を容器に詰める仕事をしていた松尾軍曹が、歯をのぞかせて笑いかけながら言った。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
守衛は何人か交替こうたい門側もんがわめ所にひかえている。そうして武官と文官とを問わず、教官の出入ではいりを見る度に、挙手きょしゅの礼をすることになっている。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
捜査一課長の堀口ほりぐち警視も、課長室につめていましたが、庁内の捜索がおわってしばらくすると、ひとりの警官が、課長室へはいってきて、挙手きょしゅの礼をしました。
奇面城の秘密 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いらえもない。ただくちがうごいた。そして寝床のうえの右の手がすこし動いた。挙手きょしゅの意志を示すように。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
隊の指揮しきをしていた青年が、そのまま先方の代表として進み出た。かれはまず大河をはじめこちらの塾生たちに厳粛げんしゅく挙手きょしゅ注目ちゅうもくの礼をおくったあと、精一ぱいの声をはりあげて
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
挙手きょしゅ、一投足とうそく、すべて社会教育とならぬものはない。われわれの目的および理想が教育であるなら、全身その理想にち、することなすことがことごとく教育でなくてはならぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それが、さあ、やっておいで、わけはないじゃないか、と誘いかけているように思われる。そこまで歩いて行って、抽斗ひきだしの中の手紙を盗みだすぐらいのことは、いかにも一挙手きょしゅ投足とうそくのわざである。
キャラコさん:06 ぬすびと (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
うやうやしく挙手きょしゅの礼をして立っている二人の白いターバンに黒眼鏡に太いひげ印度人巡警インドじんじゅんけい! 脊の高いせた方が醤買石しょうかいせきで、脊が低く、ずんぐり肥っている方が
十一体の仏像は正しく三列にならんで、明智探偵をみつめ、そろって挙手きょしゅの礼をしたかとおもうと
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おおやけの事に奔走すれば野心家とうたがわれ、老後他人の厄介やっかいになるまいと貯蓄ちょちくこころざせば吝嗇奴りんしょくどあなどられ、一挙手きょしゅ、一投足とうそく、何事にしても、吾人ごじんのする事なす事につき非難をさしはさむことのなきものはない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そうしてそれが俊助の顔を見ると、いきなり直立不動の姿勢をとって、愛嬌あいきょうのある挙手きょしゅの礼をして見せた。こちらの三人は思わず笑い出した。中でも一番大きな声を出して笑ったのは、野村だった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すっかり巨体きょたいをあらわした地下戦車の中から、岡部伍長がまっ赤に上気じょうきした顔をあらわした。彼は報告のため、加瀬谷少佐の前にけつけ、ぴったりと挙手きょしゅの礼をし
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
警官たちは、明智探偵の顔をしっているらしく、ていねいに挙手きょしゅの礼をしました。そして、ひととおり話をきくと、赤井をひったてて、パトカーにのせて、警視庁へつれていってしまいました。
おれは二十面相だ (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこへあわただしく、伝令兵が大股で近よると、司令官の前に挙手きょしゅの礼をした。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこにいた警部が、挙手きょしゅ敬礼けいれいをとって、自信ありげに答えた。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)