おも)” の例文
のちの面倒をおもって迂濶うかつに手は出さんが、わなのと知りつつ、油鼠あぶらねずみそばを去られん老狐ふるぎつねの如くに、遅疑しながらも、尚おお勢の身辺を廻って
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
お銀を妻とするについても、女をよい方へ導こうとか、自分の生涯しょうがいおもうとかいうような心持は、大して持たなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ここに天若日子、その國に降り到りて、すなはち大國主の神の女下照したて比賣ひめひ、またその國を獲むとおもひて、八年に至るまで復奏かへりごとまをさざりき。
かつこの事業の遠大を期するものなることをおもい、遂に一旦下山に決したり、ここに於て予は遂に造化の陰険なる手段に敵すること能わずして、全く失敗に帰したるなり
わたくし大笑おほわらひにわらつてやらうとかんがへたが、てよ、たとへ迷信めいしんでも、その主人しゆじんうへおもふことくまでふかく、かくも眞面目まじめものを、無下むげ嘲笑けなすでもあるまいと氣付きづいたので
幾度いくたびと無くおそるべき危険の境を冒して、無産無官又無家むか何等なんらたのむべきをもたぬ孤独の身を振い、ついに天下を一統し、四海に君臨し、心を尽して世を治め、おもつくして民をすく
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
翌日の不安をおもつてゐる、昼間になると猛烈な勢ひで圧し寄せるあの眠気の奴は、今は一体何処に潜んでゐるのか? と思ふ、あいつが夜のうちにやつて来て欲しい! などと思つてゐる——だが
F村での春 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
虫が知らせるといふものかうか分らぬが、「おもつて而して知るにあらず、感じて而して然るなり」で、動物でも何でも牝牡ひんぼ雌雄が引分けられてもいつかたがひに尋ねあてゝ一所いつしよになる。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)