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心得違
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こゝろえちが
仕つる所存なりと申立ければ大岡殿
夫は其方若年ゆゑに
心得違ひなり然ど其人殺は外に
有と申たるは福井町にて何と申者なるぞ名前を
私が
負傷を
致しますとお
父さん
痛うないかと
云つて
労つて
呉れます、
私の
心得違ひから
斯様に
零落を
致し、
目まで
潰れまして、ソノ
何んにも知らぬ
頑是のない
忰に
最う
此の
頃には、それとなく
風のたよりに、
故郷の
音信を
聞いて
自殺した
嫂のお
春の
成ゆきも、
皆其の
心得違ひから
起つた
事と
聞いて
知つて
居たので、
自分、
落目なら
自棄にも
成らうが
思へば
私は
惡黨人でなし、いたづら
者の
不義者の、まあ
何といふ
心得違ひ、と
辻に
立つて
歩みも
得やらず、
横町の
角二つ
曲りて
今は
我家の
軒は
見えぬを、
振かへりては
熱き
涙のはら/\とこぼれぬ。
此が
飛んでもない
心得違ひ。