御憐愍ごれんみん)” の例文
それでも何処までもお目出度いか解らないのは其新躰詩を矢張送つて来たよ。万一の御憐愍ごれんみんを願ふ意なんだらう。小説家といふものは斯うも未練なもんか子。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
只今では無いが浪人者が親子連れで「永々の浪人御憐愍ごれんみんを」と扇へ受けまして、有難う存じます、と扇を左の手に受けて一文貰うと右の手に取ってたもとへ入れる
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
通り懸りけるに山下の溷際どぶぎは深網笠ふかあみがさの浪人者ぼろ/\したる身形みなりにて上には丸に三ツ引の定紋ぢやうもんつきたる黒絽くろろほたるもるばかりの古き羽織を着しうたひをうたひながら御憐愍ごれんみんをと云て往來の者に手の内を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぜんから、貴女の御憐愍ごれんみんを願おうと思っていたんですけれど、島山さんのと違って、貴女には軽々かろがろしくお目にかかる事も出来ませんし、そうかと云って、打棄うっちゃって置けば、取返しのなりません一大事
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
如何いかなる境界におつるとも加茂かもの明神も御憐愍ごれんみんあれ、其人そのひと命あらばめぐあわせ玉いて、芸子げいこも女なりやさしき心入れうれしかりきと、方様の一言ひとことを草葉のかげきかせ玉えと、遙拝ようはいして閉じたる眼をひらけば
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
筆「永々親父が煩いまして難渋致します、何卒どうぞ親子の者を助けると思召して御憐愍ごれんみんを願います」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其方儀盜賊たうぞくとはしらざるとも召使めしつかひ久兵衞へ家業向かげふむき打任うちまかせ候により浪人文右衞門へ難儀なんぎかけ候段重々不埓ふらちに付屹度きつととがめ申付べきの處格別かくべつ御憐愍ごれんみんを以て御沙汰これなき間文右衞門へ詫金わびきん百兩遣はすべし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
犬公方いぬくばう下々した/″\仇口あだくちに呼ばれた位だから無法に我々同類に御憐愍ごれんみんを給はつたものだ。公の生類せいるゐ御憐愍を悪くいふ奴があるが、畢竟つまり今の欧羅巴ヨウロツパやかましくいふ動物保護で人道の大義にかなつてるものだ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
斯様なよこしま非道のことに相成りましたが、向後こうごすみやかに善心に立返りますから、幾重にも御憐愍ごれんみんをもちましてお見遁みのがしを願います、いやしくも侍たるものが、何程いかほど零落したとて縄目にかゝりましては
なし金子五兩かたり取たる段不屆至極ふとゞきしごくなり眞直まつすぐに白状せば御憐愍ごれんみんの御沙汰も有べしつゝかくさば屹度きつと拷問がうもん申付んと申されければお兼は更にいきたる心地こゝちせずわな/\ふるへて居けれども吾助はすこしも恐れたるていなくおほせには候へども私し事是なる兼と密通みつつう致せし事毛頭もうとう御座なく然ば宅兵衞より金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)