御位みくらい)” の例文
九州を征服し、山陽山陰をき、正成、義貞に勝って、思うきみ御位みくらいかせ、身は大御所、大将軍とあがめられている栄位にある。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「人生の頼みがたさから賢明な帝王さえ御位みくらいをお去りになるのであるから、老境に達した自分が挂冠けいかんするのに惜しい気持ちなどは少しもない」
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
栄光の王は神の右に坐するありて、ソクラット、保羅パウロ、コロンウェルのはい数知れぬほど御位みくらいの周囲に坐するあり、荊棘いばらかんむりを頂きながら十字に登りし耶蘇基督いえすきりすと
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
その時あま人申様もうすよう、もしこのたまを取得たらば、この御子みこを世継の御位みくらいになしたまえともうししかば、子細しさいあらじと領承したもう、さて我子ゆえに捨ん命、露ほどもおしからじと
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これを持ち伝えておるからは、お前の家柄にまぎれはない。仙洞せんとうがまだ御位みくらいにおらせられた永保えいほうの初めに、国守の違格いきゃくに連座して、筑紫へ左遷せられた平正氏たいらのまさうじが嫡子に相違あるまい。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
代々の帝の御位みくらいかせ給うは、天の日をぐということにて、天津日嗣あまつひつぎといい、また宮仕えし給う人を、雲の上人うえびとといい、都を天といい、四方の国、東国よりも、西国よりも、京へ上るといえり。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
御位みくらいに御出で遊ばす事が出来るで御座いましょう
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
無論見掛みかけ御位みくらいが安全なようでござりますが
天子におかれては、度々のご不予のため、ついに、太師へ御位みくらいを譲りたいとご決意なされました。どうか天下の為、すみやかに大統を
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
学問もよくおできになって、御位みくらいにおつきになってもさしつかえはないと思われるほど御聡明そうめいであることがうかがわれた。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
玉体と御位みくらいとのかために、さかいを安くまもる上は
「どうか、こよいは悠々身心をおやすめ遊ばして、明日は斎戒沐浴さいかいもくよくをなし、万乗の御位みくらいを譲り受け給わらんことを」と、いのって去った。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姫君が国の母の御位みくらいをお占めになった暁には住吉すみよしの神をはじめとして仏様への願果たしをなさるようにと申しておきます。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
なお、後醍醐には、ゆめ、御位みくらいを退くなどのお心はない。一国に、同時に、ふたりの天皇があるかたちとはなってしまった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
花をお持ちになった手を袖に引き入れながら、御簾みすを掲げて外を見ておいでになる姿は、ゆめにも院などという御位みくらいの方とは見えぬ若々しさである。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
持明院統と、大覚寺統と、相互から出て交代に御位みくらいく——という、あの皇室の御法則を正しくむべきだと思うのです。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
院が御位みくらいにおいでになったころ、こうした夜分などには音楽の遊びをおさせになって自分をお喜ばせになったことなどと昔の思い出がお心に浮かんで
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
やむなくさせて、御位みくらいを他の君に……という大計の方へ傾いたことにもよるかと思われます。これは、ここだけの話ですが
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御位みくらいにおきにならずに一臣下で仕えていらっしゃるのは、大納言さんがもう一段出世ができずにおくれになって、お嬢さんが更衣こういにしかなれなかった
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)
鳥羽は、御在位中にも、後、御位みくらいをゆずって、院へ移られてからも、公然と、左右にいって、はばからなかった。
たいへんなお覚えであった。上ない御位みくらいにおわしました当時とは違って、唯人ただびとのようにしておいでになる院の御姿は、よりお美しく、より光る御顔と見えた。
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
尼におなりになったことで后の御位みくらいは消滅して、それとともに給封もなくなるべきであると法文を解釈して、その口実をつけて政府の御待遇が変わってきた。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
それや余りな御偏見でしょう。——順なれば、いまのみかど後醍醐は、御位みくらいにはないはずです。大覚寺統と持明院統と、御位みくらいは一代がわりに更迭こうてつの約束でした。それを
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ今では御位みくらいをお去りになって無事閑散な御境遇でも、後宮にだけは平和の来ることはないのですから
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
して、九五きゅうご御位みくらいにのぼせ、子孫にわたって、伝国の大統を指命せられた祥瑞しょうずいと思われます。……はやく本国へお帰りあって、遠大の計をめぐらすべきではありませんか
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「けれど、ほかにも東宮の御位みくらいをのぞんでやまぬものがあれば、らんになるしかございません」
それはやっとお二つの方であったから当然東宮へ御位みくらいはお譲りになるのであるが、朝廷の御後見をして政務を総括的に見る人物にだれを決めてよいかと帝はお考えになった末
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
あい色の唐紙に包んでお上げしたのであった。院はこれを限りもなく身にんで御覧になった。このことで御位みくらいも取り返したく思召した。源氏をも恨めしく思召されたに違いない。
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
思うことにおいてなら、みかどは申すにおよばず、おおかたは、世がしかれとは祈っていまい。まして至上の御位みくらいにあるみかどに私利私欲のないことは誰よりもあきらかなこと
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、中宮ちゅうぐう西園寺姞子さいおんじよしこの産んだ第一皇子が四歳となると、御位みくらいをゆずッて、これを
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美貌びぼうの整いきった冷泉院と、六条院はいよいよ別のものとはお見えにならなかった。まだ盛りの御年齢で御自発的に御位みくらいをお退きになった君に六条院は悲しみを覚えておいでになった。
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
院は御位みくらいをお去りになりまして、盛りの御時代は過ぎたように、ちょっと考えては思うでしょうが、たぐいもない御美貌びぼうでいらっしゃるのですから、まだお若々しくて、りっぱに育った娘があれば
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
院の御位みくらいにお変わりあそばしただけで、政治はすべて思召しどおりに行なわれていたのであるから、今の帝はまだお若くて外戚の大臣が人格者でもなかったから、その人に政権を握られる日になれば
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
故院はおおぜいのお子様の中で特に私をお愛しになりながら、御位みくらいをお譲りになることはお考えにもならなかったのでございます。その御意志にそむいて、及びない地位に私がどうしてなれましょう。
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)