川原かはら)” の例文
見晴らしが好く、雲がしきりに動いてゐる山々も眼下になり、その間を川が流れて、そこの川原かはらに牛のゐるのなども見えてゐる。
遍路 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
これを對岸たいがんからうつすので、自分じぶんつゝみりて川原かはら草原くさはらると、いままで川柳かはやぎかげえなかつたが、一人ひとり少年せうねんくさうちすわつてしきりに水車みづぐるま寫生しやせいしてるのをつけた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
よるがだん/\けてると、ひるておいたあのきさゝげののたくさんえてゐる、そして、景色けしきのさっぱりしてゐたあの川原かはらに、いまこの深夜しんやに、千鳥ちどりがしっきりなくいてゐる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
まれ川原かはらのそこ、かしこ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
の川の川原かはらの石はいつも白い様な色合を帯びてゐて水苔みづごけ一つ生えない。清く澄んだ流であるが味が酸いので魚も住まず虫のたぐひも卵一つ生むことをしない。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
自分じぶん學校がくかうもんはした。そしてうちにはかへらず、田甫たんぼた。めやうとおもふてもなみだまらない。口惜くやしいやらなさけないやら、前後夢中ぜんごむちゆうかはきしまではしつて、川原かはらくさうち打倒ぶつたふれてしまつた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
川原かはらの底の底のあたひなき
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
これは戦後に土地の人が売払つたものに相違ない。N君はどう思つたか、歯を黒く染めた女の能面を一つ買つた。二人は街を歩いて行つて Isarイーサル 川の橋を渡り、川原かはらに下りて行つた。
日本大地震 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
伊太利亜イタリアReggioレツジヨ の町を見つつ過ぐしらじらとせる川原かはらもありて
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ここに来て間もなく日本大地震の報に接し、前途が暗澹あんたんとしてゐた時にも私はよくこの川原かはらに来た。まだ気候が暑いので、若者に童子を交へて泳ぎ、寒くなると砂原に焚火たきびをしてあたつて居る。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
宗教上の何とかふ行列を一時間ばかり見、それからイーサル川の川原かはらを歩いた。連日教室で根をつめて為事しごとし、連夜南京虫のために気を使ふ身にとつては、今日の散歩は何とも云へぬ気持である。
南京虫日記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
甲斐かひがねを汽車は走れり時のまにしらじらと川原かはらの見えしさびしさ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
しづかなる川原かはらをもちてながれたる狭間はざまかはをたまゆらに見し
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)