島嶼とうしょ)” の例文
八重山宮古の島々はひとり歌謡のきわだっているばかりでなく、極南界にあってその言語音韻も純古にして北の島嶼とうしょとは趣をことにする。
それは本土との交通がほとんどなく、少数の貧しい漁夫たちが、所々の寂しい山蔭やまかげに住んでるような、暗く荒寥こうりょうとした島嶼とうしょであった。
ウェーゲナーの大陸移動説では大陸と大陸、また大陸と島嶼とうしょとの距離は恒同こうどうでなく長い年月の間にはかなり変化するものと考えられる。
神話と地球物理学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
見方によっては太平洋の島嶼とうしょいくつかを占領したよりも大きな手柄です。F3号の愛国心に報いるところがなくてはなりません
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
海浜または島嶼とうしょに住んでいる女子が男まさりに気概があり、権力が強く、女子の社会的地位の高いのは一般的である。
本土寄りの南の島嶼とうしょが“島前”で、北の陸地を“島後”とよび、そのあいだは、わずか六海里でしかない。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このマゼラン海峡の西口からチリー国の沿岸を北行している島嶼とうしょのうち、南方にケンブリジ島をひかえ、北方にマドル島およびチャタム島をのぞんで、南緯なんい五十一度
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
鬼のむ島か、ただしは、人も鬼も全く棲むことなき島か、その事はわからないが、この辺に島嶼とうしょが存在することを予想して、そうして、針路をそちらに向けたところ
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なんとなれば元来島嶼とうしょなるものはその面積に比すれば大陸諸国よりもはるかに長き海岸を存し、その気候は通例温和にして四時の変化はるかに少なきがゆえに商業の動作
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
独ソノ東ヲ欠ク十二。島嶼とうしょソノ間ニ星羅せいら棊布きふシ皆青松ニおおハル。潮ハ退キ浪ハしずかニシテ鴎鷺おうろ游嬉ゆうきシ、漁歌相答フ。こうトシテ画図ニ入ルガ如シ。既ニシテ舟松島ノ駅ニ達ス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
富は大陸にもあります、島嶼とうしょにもあります。沃野にもあります、沙漠にもあります。大陸のぬしかならずしも富者ではありません。小島の所有者かならずしも貧者ではありません。
湿めッぽく煙っているので、雪の海に、小さな森を載せた島嶼とうしょが突き出ているようだ、私が踏んがけた雪は、思いの外に堅く氷っているので、さらぬだに辷りやすい麻の草履が
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
たとえば、ちょうど、大海原のようである。そしてその黄色な稲の海の中に、村々の森、町々の白堊はくあがさながら数限りもなく点散している島嶼とうしょの群のようにも見られるのであった。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
世界の大陸、島嶼とうしょのほんの一部分に人間は生存している。大陸、島嶼の大部分には草木禽獣の類が棲息せいそくしているのである。陸の何倍かある海洋には魚介の類が棲息しているのである。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
八代やつしろ海、大村湾、千々岩灘、天草なだ、有明海とう幾多の区分された海洋と、天草諸島をはじめ多数の島嶼とうしょと、更に屈曲極まりなき海岸線を持つ陸地との交錯によって、地理的に変幻無比の地形が
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
わずかにあるをカワラケと呼び極めて不吉とすと書いたやおまへんかと遣り込められて廓然大悟し、帰って『伊勢参宮名所図会』島嶼とうしょの図を見ると阿婆良気島に果して少々木を画き生やし居る。
ところがこの琉球民族という迷児は二千年の間、支那海中の島嶼とうしょ彷徨ほうこうしていたにかかわらず、アイヌや生蛮みたように、ピープルとして存在しないでネーションとして共生したのでございます。
琉球史の趨勢 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
岩礁や島嶼とうしょが蜂の巣のように存在する朝鮮南端に発育することだ。
明石鯛に優る朝鮮の鯛 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
安永八年の桜島の爆裂には、その付近に数個の新島嶼とうしょを湧出した。
日本天変地異記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そのおもな原因は日本が大陸の周縁であると同時にまた環海の島嶼とうしょであるという事実に帰することができるようである。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして顔を離すと、あらためて、六曲一双の屏風の広さを——いや世界の広さを見直して——また眼のまえの細長い一島嶼とうしょの小ささを全図と比例しては見入っていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然れども日本の気候と天象てんしょう草木そうもくとは黒潮こくちょうの流れにひたされたる火山質の島嶼とうしょの存するかぎり、永遠に初夏晩秋の夕陽せきよう猩々緋しょうじょうひの如く赤かるべし。永遠に中秋月夜ちゅうしゅうげつや山水さんすいあいの如く青かるべし。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこはもう石見いわみ沿岸寄りの近くで、名も知れぬ島嶼とうしょのかげに隠れこんだ相手の大小の船をみると、その帆ばしらやみよしには、樺色地かばいろじに白く“唐梅紋からうめもん”を抜いた海賊旗をかかげている。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然れども日本の気候と天象てんしょう草木そうもくとは黒潮こくちょうの流れにひたされたる火山質の島嶼とうしょの存するかぎり、永遠に初夏晩秋の夕陽せきよう猩々緋しょうじょうひの如く赤かるべし。永遠に中秋月夜ちゅうしゅうげつや山水さんすいあいの如く青かるべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)