トップ
>
尤物
>
ゆうぶつ
ふりがな文庫
“
尤物
(
ゆうぶつ
)” の例文
以前ローマ人は、半男女を不祥とし、生まれ次第海に投げ込んだが、後西暦一世紀には、半男女を、
尤物
(
ゆうぶつ
)
の頂上として求め愛した。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
梅の花は天下の
尤物
(
ゆうぶつ
)
だといわれます。これを
単
(
た
)
だ
翠
(
みどり
)
の松、緑の竹に比べますと色があってこの二つに取り添うと何んとなく軟かい一脈の趣が生じます。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
しかも、これほどな
尤物
(
ゆうぶつ
)
が一生涯彼の偉業に奴隷的感謝をささげ、彼の前にうやうやしくおのれをむなしゅうする。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
あるある島田には間があれど
小春
(
こはる
)
は
尤物
(
ゆうぶつ
)
介添えは
大吉
(
だいきち
)
婆
(
ばば
)
呼びにやれと命ずるをまだ来ぬ先から俊雄は卒業証書授与式以来の胸
躍
(
おど
)
らせもしも
伽羅
(
きゃら
)
の香の間から扇を
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
伝え聞く、悪源太義平の
寵愛
(
ちょうあい
)
を受けた八重菊、八重牡丹の姉妹は、都にも稀れなる
尤物
(
ゆうぶつ
)
であったそうな。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
古歌にちなんで足曳と命名されたこの
駿馬
(
しゅんめ
)
は、野に放したが最後、山鳥のように俊敏に、草を踏みしだき、林をくぐり、いや、鳥のごとく天空をも
翔
(
か
)
けんず
尤物
(
ゆうぶつ
)
。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その木に
本末
(
もとすえ
)
あれば、本木の方が、
尤物
(
ゆうぶつ
)
中の尤物たること
勿論
(
もちろん
)
なり、それを手に入れてこそ主命を果すに当るべけれ、伊達家の伊達を増長致させ、本木を譲り候ては
興津弥五右衛門の遺書(初稿)
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「ははは、構わん、遣れ。あの花売は
未曾有
(
みぞう
)
の
尤物
(
ゆうぶつ
)
じゃ、また貴様が
不可
(
いけ
)
なければ
私
(
わし
)
が占めよう。」
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この外『新古今』の「
入日
(
いりひ
)
をあらふ沖つ
白浪
(
しらなみ
)
」「
葉広
(
はびろ
)
かしはに霰ふるなり」など、または
真淵
(
まぶち
)
の
鷲
(
わし
)
の
嵐
(
あらし
)
、
粟津
(
あわづ
)
の
夕立
(
ゆうだち
)
の歌などの如きは和歌の
尤物
(
ゆうぶつ
)
にして俳句にもなり得べき意匠なり。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
三渓の蒐集品は文人画ばかりでなく、古い仏画や絵巻物や宋画や
琳派
(
りんぱ
)
の作品など、
尤物
(
ゆうぶつ
)
ぞろいであったが、文人画にも
大雅
(
たいが
)
、
蕪村
(
ぶそん
)
、
竹田
(
ちくでん
)
、
玉堂
(
ぎょくどう
)
、
木米
(
もくべい
)
などの
傑
(
すぐ
)
れたものがたくさんあった。
漱石の人物
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
その最後の第十七代
松平上野介忠敏
(
まつだいらこうずけのすけただとし
)
こそは、幕末剣客中の
尤物
(
ゆうぶつ
)
で、神田講武所の師範代を長らく勤め、かの清川八郎なぞと共に、新徴組を組織して、その副隊長に擬せられた一代の風雲児です。
旗本退屈男:05 第五話 三河に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「どころの騒ぎか、ちょいと見な、滅法もねえ、
尤物
(
ゆうぶつ
)
だぜ」
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
歴史の遺した
尤物
(
ゆうぶつ
)
とはそこに大なる相違があります。
陶芸家を志す者のために:――芸術における人と作品の関係について――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
「ほほう、これは、
尤物
(
ゆうぶつ
)
だ」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
かかる
曠世
(
こうせい
)
の
尤物
(
ゆうぶつ
)
を無窮に残し拝ますはアの筆のほかにその術なしとあって、その装束を脱いだ体を画かしめた。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その辺の
魂胆
(
こんたん
)
はまだ貴様にはわかるまい、わかってもらう必要もないのだが、貴様の今に始めぬ色師自慢から思いついたのは、酒井左衛門尉の
御寵愛
(
ごちょうあい
)
を
蒙
(
こうむ
)
った
尤物
(
ゆうぶつ
)
が
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
本木の方が
尤物
(
ゆうぶつ
)
中の尤物たること
勿論
(
もちろん
)
なり、それを手に入れてこそ主命を果すに当るべけれ、
伊達家
(
だてけ
)
の伊達を増長
致
(
いた
)
させ、本木を譲り
候
(
そろ
)
ては、細川家の
流
(
ながれ
)
を
涜
(
けが
)
す事と相成り申すべくと申
候
(
そろ
)
。
興津弥五右衛門の遺書
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「いや、じつに
尤物
(
ゆうぶつ
)
! 拙者は、送り狼の役を買って藤屋まで引っ返そう。」
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「大した
尤物
(
ゆうぶつ
)
でございます」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
全く惚れ薬取りが惚れ薬に中毒したのだ。その節集古会員上松蓊君も同行したから彼女の
尤物
(
ゆうぶつ
)
たる事は同君が保証する、あの辺へ往ったら尋ねやってくれたまえ。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
酒井左衛門尉の御寵愛を
蒙
(
こうむ
)
った
尤物
(
ゆうぶつ
)
が、いま宿下りをして遊んでいることだ。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
掛けておきましたところが、これも縁でございますな。いや、
逸物
(
いちもつ
)
、
尤物
(
ゆうぶつ
)
——なんぼ人形食いの殿様でも、これがお気に召しませんようでは、今後こういう御相談は、平茂、まっぴら御免、なんて、前置きが大変。
元禄十三年
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
尤
漢検準1級
部首:⼪
4画
物
常用漢字
小3
部首:⽜
8画
“尤”で始まる語句
尤
尤至極
尤様
尤異
尤千万
尤之次第