寝室しんしつ)” の例文
旧字:寢室
いきなりシューラの両肩りょうかたつかんで、自分の寝室しんしつへ引っぱって行った。シューラは心配しんぱいになって、むねがどきりとした。ママはこういった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
食堂から寝室しんしつおごそかにやっていく時には、元気げんきのいい行進曲マーチそうした。時によっては、二人ふたりおとうとといっしょに行列ぎょうれつをつくった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
「やれやれ、とうとうじぶんの寝室しんしつから追いだされてしまった。まるっきり、ゆめをみているのか、気がちがっているのか……わけがわからない」
船室では、同室の沢村さん松山さんが、いないときが多かったので、いつでも、自分の上段の寝室しんしつにあがり、そべって、日記をつけていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
それから、そのぞうをひきおこさせ、じぶんの寝室しんしつのベッドのそばに立てさせました。そして、それを見るたびに、王さまはなみだをながしていいました。
こうなれば隠れている奴を引きずり出して、あやまらせてやるまではひかないぞと、心をめて寝室しんしつの一つを開けて中を検査しようと思ったが開かない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
強盗は、地主さんの寝室しんしつのドアを、コツコツとたたきましたので、地主さんは、女中でもなにか用事があってきたのかと思って、知らんふりしてねていました。
丘の銅像 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
居間や寝室しんしつや料理をつくるところや、浴室よくしつなんかも、ちゃんとできていて、この最地階だけでも、不自由なく実験をしたり起きふしができるようになっていた。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたしは一遍いっぺんに酔いがさめた。とはいえ、家へもど途中とちゅうで、わたしはやはり、ニワトコのかげの例のベンチのそばへ行って、ジナイーダの寝室しんしつの小窓を見上げた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
その下には箪笥たんすの一ツも欲しいところだ。この部屋は寝室しんしつにでも当てるにふさわしく、二方が壁で窓の外には桐のえだがかぶさり、小里万造氏の台所口が遠くに見えた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
家には戸とまどもちゃんとついていて、これがリスの食堂しょくどう寝室しんしつというわけです。そこで、みんなは木の葉っぱの寝床ねどこと、ミルク入れと、それからクルミを二つ三つ入れてやりました。
つくりものの鳥は、「皇帝のご寝室しんしつづき歌手」という、名前をいただき、位は左側第一位にのぼりました。皇帝は、心臓のある左側のほうが、右側よりもすぐれていると、思っていたからです。
君見ずば心地死ぬべし寝室しんしつの桜あまりに白きたそがれ
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
お姫さまはもうどうしていいかわからなくなりましたので、侍女じじょにいいつけて、王子の寝室しんしつにしのびこませました。
牧師ぼくしは、大またに寝室しんしつへひっかえすと、やにわに、すみっこにおいてあったかきぼうをにぎりしめ、足音をしのばせて、音のするほうへとおりていった。
みんな朝飯を食いに食堂に行った後のがらんとした寝室しんしつを、コックの小母おばさんが、掃除そうじしていましたが
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
父は外出しているし、母は気分が悪いから何も食べたくないと言って、寝室しんしつにとじこもっていたのだ。従僕じゅうぼくたちの顔色から、わたしは何かしら変ったことが起きたなと察した。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
須永はチョコレートの兵隊のように、わざと四角ばって、帆村の寝室しんしつを出ていった。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ギャングは、警官けいかんに追われて、この家に逃げこみ、ついさっきまでこの寝室しんしつにしのびこんでいたにちがいない。
廊下の行詰りになったかべをおすと、薄暗うすぐら寝室しんしつで、ランプがついていて、マントルピイスの上が白く光るので、近よってみると、人骨がばらばらにおいてあるのでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
そこでポントスの寝室しんしつを調べてみると、ベッドはたしかに人の寝ていた形跡けいせきがあるが、ポントスは見えない。なおもよく調べると、ゆかの上に人血じんけつこぼれたのを拭いた跡が二三ヶ所ある。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「今夜はおまえの寝室しんしつとびらをあけておきなさい。わしは家来けらいたちをそとに立たせておく。あの男がねこんだら、ふみこんでいって、しばってしまい、ふねにのせて、遠くへつれていかせよう。」
あくる日になると母は、町へ引揚ひきあげると言い出した。その朝、父は母の寝室しんしつへ入って、長いこと二人きりでいた。父が何を言ったか、だれも聞いた者はないけれど、とにかく母はもう泣かなくなった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)