いずれ)” の例文
恵王は打返して「いずれくこれをいつにする」と問うた時に、孟子は「人を殺すをたしなまざるものくこれをいつにせん」といった。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
または正保二年といい、いずれが真であるかは判じ兼ねるが、この時既に黒薙川附近まで探られたものであることはうたがいを容れない。
黒部峡谷 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
もっともいずれにせい、わしが思うたほどの事件ことでない、とだけは了解したのじゃけれども、医学士などは、出たら目じゃろう。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
物の生存の上よりいわば、意あっての形形あっての意なれば、いずれを重とし孰を軽ともしがたからん。されど其持前の上よりいわば意こそ大切なれ。
小説総論 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
女連は大方は一度か二度以上口を利合ききあった人達であったが、それがいずれも、式のあとの披露ひろうの席に、酌や給仕をするためにやとわれて来たのであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それより談は其事の上にわたりて、太祖、その曲直はいずれに在りやと問う。太子、曲は七国に在りと承りぬとこたう。時に太祖がえんぜずして、あらずは講官の偏説なり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
政府もし英国の要求を聞入ききいれざるにおいては仏国は英と同盟してただち開戦かいせんおよぶべしとせまりたるがごとき、いずれも公使一個のかんがえにして決して本国政府の命令めいれいに出でたるものと見るべからず。
何人なにびとも満足にねむっていた者は無かったものと見え、いずれもムクムクと頭をもたげて
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
河中へ投込候ものと相見え今以て行方相知れ不申候もうさずそろ又土蔵へ忍入りしやわたくし所持の衣類金銀ともことごとく盗取り逃去り候跡へ我等参合まいりあわせきよと申す下婢かひに相尋ね候処驚怖の余りおのれの部屋に匿れ潜みおり候えば賊の申候言葉ならびいずれへ逃去候しか不相分あいわからず申出候もうしいでそろしかるに一応家内取調申候処庭前ていぜん所々しょ/\に鮮血の点滴有之これあり殊に駒の緋絹縮ひぎぬちゞみ下〆帯したじめおびりゅうの単物ひとえもの血に染み居候まゝ打棄うちすて有之候間此段御訴申上候
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それで、『大瀬、お前は晴二郎の死骸を、此まま引取って行くか、それとも此方で本葬をして骨にして持って行くか、いずれでも其方の都合にするが可い』
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
いずれかといえば発育盛りの若木が多く、とちならの類・山榛やまはんのき・桂・樺・シデ・ぶなかえでなどは一抱以上もあるものがないでもないが、大木は割合に少ない方であろう。
黒部峡谷 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
彼は恵王の「いずれくこれにくみする」との重ねての問に対して、「天下与せざる無し」と答え
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
すなわち其の至るところ又如何いかなるを知らず、近代を以て之を言えば、欧陽少卿おうようしょうけい蘇長公そちょうこうはいは、しばらく置きて論ぜず、自余の諸子、之と文芸のじょう角逐かくちくせば、たれか後となりいずれか先となるを知らざる也。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「賛成賛成」といずれも疲れ切ったる毛脛けずねを叩く。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
他の一人からは冬のとんびと云う風に、いずれも上等品の註文を取ることに抜目がなかったが、いつでも見本を持って行きさえすれば、山の町でも好い顧客とくいを沢山世話するような話をも
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
いずれにしても藤原から登るのと日程に大差はあるまいと思う。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)