トップ
>
嫌厭
>
けんえん
ふりがな文庫
“
嫌厭
(
けんえん
)” の例文
そして、その頬に刻まれた数条の深い
皺
(
しわ
)
に、おれは悲哀と、倦怠と、人類に対する
嫌厭
(
けんえん
)
と、孤独の熱望とを示すものを読みとった。
沈黙:——神話
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
いつのまにか義経の胸は、兄に対する
嫌厭
(
けんえん
)
でいっぱいになっていた。黄瀬川の宿で初めて会った時とは正反対な兄を見るここちがした。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分こそ世界の理性だと
自惚
(
うぬぼ
)
れながら実はその悪い夢にすぎない選良者、野心家、虚栄者、などにたいして、ある
嫌厭
(
けんえん
)
の情を覚えたのだった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私をしてあなたに代わらしめたならば疑いの目、冷たい目、
嫌厭
(
けんえん
)
の目を顔に浴びねばならない。あなたの考えてるようなことは何の苦もなく発表できる。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
親子のあいだにさえ好悪や
嫌厭
(
けんえん
)
がある、まして個性を持った他人どうしに、
嫉視
(
しっし
)
や敵対意識や、競争心や排他的な行動のあるのが当然じゃあないだろうか。
おごそかな渇き
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
すでにこの河面に
嫌厭
(
けんえん
)
たるものを
萌
(
きざ
)
しているその上に、私はとかく後に心を
牽
(
ひか
)
れた。何という不思議なこの家の娘であろう。この娘にも一光閃も、一陰翳もない。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
嫌厭
(
けんえん
)
先生という年わかい世のすねものが面白おかしく世の中を渡ったことの次第を叙したものであって
ロマネスク
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
枕山がこの「飲酒」一篇に言うところはあたかもわたくしが今日の青年文士に対して抱いている
嫌厭
(
けんえん
)
の情と
殊
(
こと
)
なる所がない。枕山は酔郷の中に遠く古人を求めた。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お雪は愛嬌にいって、浅吉と連れ立って自分の部屋へやって来ましたが、そこへ近づくと、浅吉の恐怖と
嫌厭
(
けんえん
)
の色が一層深くなって、ゾッと身ぶるいをしました。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
とある
空地
(
あきち
)
に
生
(
は
)
えた
青桐
(
あおぎり
)
みたいな、無限の退屈した風景を映像させ、どこでも同一性の方則が反覆している、人間生活への味気ない
嫌厭
(
けんえん
)
を感じさせるばかりになった。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
失望といわんか
嫌厭
(
けんえん
)
と名づけんか自ら
分
(
わか
)
つあたわざるある一念の心底に
生
(
は
)
え
出
(
い
)
でたるを覚えつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
しかしそれでも彼は幸福だった。なぜなら幸福とは——と彼は胸の中で言った——愛せられることではない。愛せられるというのは、
嫌厭
(
けんえん
)
の念と入りまざった、虚栄心の満足である。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
ふとくすぐられるような
弛
(
ゆる
)
びを覚えて、双方で
噴飯
(
ふきだ
)
してしまうようなことはこれまでにめずらしくなかったが、このごろの笹村の
嫌厭
(
けんえん
)
の情は妻のそうした
愛嬌
(
チャーム
)
を打ち消すに十分であった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
出したとき男は羞恥も顧慮も無い、平明な、むしろ
嫌厭
(
けんえん
)
するような顔をして
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
そして生活ぶりは極度に
吝嗇
(
りんしょく
)
を極めて人との交際を
嫌厭
(
けんえん
)
しておりますから、近隣のものでこの男と
往来
(
ゆきき
)
しているのはほとんどありませんし、また当人がこれだけの財を持っているということを
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
然様
(
そう
)
いう軽視
若
(
もし
)
くは
蔑視
(
べっし
)
を与える如き男が、今は
嫌厭
(
けんえん
)
から進んで憎悪又は虐待をさえ与えて居る其妻に対しては、なまじ横合からその妻に同情して其夫を非難するような気味の言を聞かされては
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
半ばの
不憫
(
ふびん
)
さと、半ばの
嫌厭
(
けんえん
)
と、複雑な感情でルーダオは妹の姿を眺め、
暗澹
(
あんたん
)
としたため息をもらすのである。そして、そのあとでは、ふっと、内地人に対して耐えられない憤りの念が湧いてくる。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
が、ウェッシントン夫人はまさに百人目の女であった。いかに私が
嫌厭
(
けんえん
)
を明言しても、または二度と顔を合わせないように、いかに手ひどい残忍な目に逢わせても、彼女にはなんらの効果がなかった。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
「ナニそれでは貴殿においても、徳川幕府に
嫌厭
(
けんえん
)
ござるので?」
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
嫌厭
(
けんえん
)
も憎しみもわかず、いよいよ不びんを増すばかりなのが、彼を、だらしのない、一個の
懊悩
(
おうのう
)
の男にしていた。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
クリストフは
微笑
(
ほほえ
)
ましい心持で、ジョルジュのうちに見出した、ある種の本能的な反感を、自分がよく知ってるあの
嗜好
(
しこう
)
と
嫌厭
(
けんえん
)
とを、そしてまた、無邪気な一徹さを
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その上子供の木下に向って、掻餅を与えながら、一種の手柄顔と、
媚
(
こ
)
びと歓心を求める造り笑いは、木下に
嫌厭
(
けんえん
)
を催させた。堺屋のおふくろは
箸
(
はし
)
を投げ捨て、怒って立って行った。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
恐るるとにはあらで一種やみ難き
嫌厭
(
けんえん
)
を
憎悪
(
ぞうお
)
の胸中にみなぎり
出
(
い
)
づるを覚えしなり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
あの
嫌厭
(
けんえん
)
ばかりである。
道化者
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
余りな自己
嫌厭
(
けんえん
)
や
慚愧
(
ざんき
)
のあとでは、人間はふと、他の人間の中に“真”を求めたり美徳のまねごとでもして自己の救いに置き代えてみたくなるものらしい。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
城太郎は、ふと、
憤
(
いきどお
)
りに似たものを胸に抱いた。武蔵のからだにかけてある女の
裲襠
(
うちかけ
)
が気に喰わないのである。また、武蔵の着ている派手な着物に
嫌厭
(
けんえん
)
がわくのであった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分という人間にすら
嫌厭
(
けんえん
)
がわいて、泣いたぐらいでは、心の
慟哭
(
どうこく
)
がおさまらなかった。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
棘
(
とげ
)
のつらさの余り
嫌厭
(
けんえん
)
になった。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
嫌
常用漢字
中学
部首:⼥
13画
厭
漢検準1級
部首:⼚
14画
“嫌”で始まる語句
嫌
嫌悪
嫌疑
嫌味
嫌忌
嫌気
嫌応
嫌疑者
嫌々
嫌惡