天上てんじょう)” の例文
「もうこんなみじめな下界げかいには一こくもいたくない。」といって、いもうとはふたたびはとの姿すがたとなって、天上てんじょう楽園らくえんかえってしまったのです。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
だが、彼がそこから風船にでも乗って天上てんじょうしなかった限り、この足跡は賊が井戸の中へ這入ったとしか解釈出来ないものである。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もうまた天上てんじょうしたくなって、まいにち、豆の木のはしごばかりながめていました。するとそれが気になって、気になって、気がふさいで来ました。
ジャックと豆の木 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
これで、ようやくニールスにも、じぶんたちは、あいかわらず海の上を飛んでいて、天上てんじょうにいるのではないということが、はっきりとわかりました。
あくる日になると、ゆうべの風雨の最中に、永代えいたいの沖から龍の天上てんじょうするのを見た者があるという噂が伝わった。
異妖編 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ましてその竜が三月三日に天上てんじょうすると申す事は、全く口から出まかせの法螺ほらなのでございます。いや、どちらかと申しましたら、天上しないと申す方がまだ確かだったのでございましょう。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「そうそうシュワルツコッフ博士だ。それから偽のシュワルツコッフ博士もだ。二人のシュワルツコッフ博士が一緒に天上てんじょうしてしまったのだ。なぜだろう。なぜだろう。僕は気が変になりそうだ」
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
天上てんじょうにちそこにち
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
やがて、かれらのれつがあるたか広場ひろばたっしたときに、かつて天上てんじょう神々かみがみたちよりほかにはられていなかった芸当げいとうをして、きょうじたことでありましょう。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これは、人間にんげんなどのるものでない。天上てんじょうたかく、わしかたかが、どこからかくわえてきて、ここへかけていったものだろう。なんにせよ、またとがたい、とうといものだ。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
先頭せんとうには、かわいらしいうさぎが、つぎにおおかみが、そして、徳利とくりったくまが、きつねが、りすが、という順序じゅんじょに、ちょうど、さるが、いわうえた、天上てんじょう行列ぎょうれつそのままであったのです。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人間にんげんとして、天上てんじょうのあなたをおしたいするのは、つつしみのないことかもしれませぬけれど、うつくしいものをあいするこころに、かみひともかわりないならば、どうぞ、わたしねがいをおれくださいまし。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
電車でんしゃ停留場ていりゅうじょうかって、ある途中とちゅうで、ふと天上てんじょうの一つのほして、こういいました。そのほしは、いつも、こんなに、あおひかっていたのであろうか。それとも、今夜こんやは、とくにさえてえるのだろうか。
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)