)” の例文
……それに、言わるれば、白粉おしろいをごってりけた、骨組の頑丈なあねというのには覚えはあるが、この、島田髷には、ありそうな記憶が少しもない。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして奥の部屋へ、抱き上げてくると、衣服を出して、着かえさせたり、きずをあらためて、薬をけたりして
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しばらくしてから、また八畳へ出て見ると、みんながお召換めしかえをやっていた。芳江が「あのお貞さんは手へも白粉おしろいけたのよ」と大勢に吹聴ふいちょうしていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
色白で円顔で、鼻高く唇薄く臙脂べにけたように真紅である。そうしてその眼は切れ長であったが、気味の悪い三白眼で、絶えず瞳の半分が上瞼うわまぶたに隠されている。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うしても始めて結う時は、油を沢山たんとけないと旨い恰好に出来ませんからね、お心持こゝろもちは悪うございますが、我慢して下さいまし、少しお痛うございましょう……さア出来ました
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
どうもあの婦人の様子がおかしいおかしいと思いました。あれはうその白痴ですよ。偽の婦人おんなですよ。白粉おしろいなんかをいやにけてると思いましたが、今になって考えると、あれは男の顔ですよ
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
敬太郎が石鹸シャボンけた頭をごしごしいわしたり、堅い足の裏や指の股をこすったりする間、森本は依然として胡座をかいたまま、どこ一つ洗う気色けしきは見えなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「化粧に、顔へけるものさ。鉛華えんかもあれば、もちごめの粉でこしらえたものもある」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
燃えついたばかりのほのおに照らされた主婦の顔を見ると、うすく火熱ほてった上に、心持御白粉おしろいけている。自分は部屋の入り口で化粧のさびしみと云う事を、しみじみと悟った。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あぶらけないでも面白い程自由になる。ひげかみ同様にほそく且つ初々うい/\しく、くちうへを品よく蔽ふてゐる。代助だいすけは其ふつくらしたほゝを、両手で両三度撫でながら、鏡のまへにわがかほうつしてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
油をけないでも面白い程自由になる。髭も髪同様に細くかつ初々ういういしく、口の上を品よくおおうている。代助はそのふっくらした頬を、両手で両三度でながら、鏡の前にわが顔を映していた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おい、もう少し、石鹸しゃぼんけてくれないか、痛くって、いけない」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)