四手よつで)” の例文
香以はやみに紛れて茶屋へ引き取り、きわにはことばを尽して謝し、「金は店からすぐ届ける」と云いおわって四手よつでに乗り、山城河岸へ急がせた。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
なればこそ、急用あって四手よつで駕籠へ乗り四谷の師匠の家の前を素通りするとき、ほんとうに師匠はしらないだろうが、いつも必ずこの私は
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
威勢のいい四手よつで駕籠が次郎左衛門を追い越して飛んで行った。その提灯の灯が七、八間も行き過ぎたと思う頃に、足早に次郎左衛門の後をつけて来た者があった。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ちょうど一昨日おとといの夕方でありました、うちの男衆がこの出水でみず雑魚ざこを捕ると申しまして、四手よつでを下ろしておりますと、そこへこの犬が流れついたのでございます、吃驚びっくりしてよく見ると
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
四手よつでげてもほしかゝらず、びんのするしづくちぬ。あゝ、引導いんだうわたしたな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
子之助が品川の湊屋にいると、竜池は四手よつでを飛ばして大野屋に来た。そして子之助に急用があるから来いと言って遣った。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さすがせて、とがつたつらなが尻尾しつぽさぬけれど、さてうしてには、足代あじろんで四手よつでしづめて、身体からだつて、ていよく賃無ちんなしでやとはれたじやうぬま番人ばんにん同然どうぜん寐酒ねざけにもらず
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またてく/\とぬま出向でむく、と一刷ひとはいたかすみうへへ、遠山とほやまみねよりたか引揚ひきあげた、四手よつでいてしづめたが、みちつてはかへられぬ獲物えものなれば、断念あきらめて、こひ黄金きんふなぎんでも、一向いつかうめず
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)