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咲亂
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さきみだ
盛りと
咲亂れ晝と雖も
花明りまばゆきまでの
別世界兩側の引手茶屋も
水道尻まで
花染の
暖簾提灯軒を揃へて
掛列ね萬客の出入袖を
さま/″\の
女を
引込むのを
術としたが、
當春、
天氣麗かに、
桃の
花のとろりと
咲亂れた、
暖い
柳の
中を、
川上へ
細い
杖で
散策した
時、
上流の
方より
柳の
如く、
流に
靡いて
吾等の
上陸した
邊は
自然の
儘なる
芝原青々として、
其處此處に、
名も
知れぬ
紅白さま/″\の
花が
咲亂れて、
南の
風がそよ/\と
吹くたびに、
陸から
海までえならぬ
香氣を
吹き
送るなど
盛りと
咲亂れえも云れぬ
景色に寶澤は
茫然と暫し
木蔭に
休らひて
詠め居たり此時
遙の
向より年頃四十
許の男
身に
編綴といふを
纏ひ
歩行來りしが
怪しやと思ひけん寶澤に向ひて名を